イタナルコ編

□綺麗なお兄さんはいりませんか?
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  通学途中に綺麗な男の人を見た。すらりとした体躯の、男の人では珍しい、長髪で……女性めいた繊細な容貌が似合う物腰をしている。こんな住宅街では確実に浮き上がる、場違いなほど煩雑とした下町や子供が遊ぶ笑い声の絶えない公園が似合わない。
(住む世界が違うって言うのを体現しているようだってば!)
 潤んだような黒目がちの瞳を縁取る長い睫毛をやや伏せて、誰かを待っている様子で公園の入口付近に立って背をフェンスに預けていた。
 あたしは、通りすぎる際にほんの少しだけ気にして一瞥すると、先を急いだ。
 自宅から通学先である木葉女学院は、徒歩圏内にあるとはいえ、二十分は軽く掛かる。普段は自転車で通っているのだが、その肝心な自転車を、事情があって昨日学校に置いて帰った。
 あたしは、先を急ぎながら首を傾げる。何故ならあの日から、良く先程の男の人を見かけるように成ったからだ。
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