■天上の海・掌中の星 3

□食彩も色々?
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冗談はともかく、
ルフィ坊やも
一応は手伝う格好の
“ケーキ作り”のお話
ということで。
好きなものをと構えても、
手が追いつかにゃあ
話にならんぞと、
その道の大家が
ふふんと笑えば。
だから、
器用な女子が
メンツの中に
3人もいるんだってと、
何でかそれを、
我がこと自慢のように
主張する坊ちゃんでもあって。

 「だが、
  その子らの腕前、
  どこまで把握
  できてんだ? お前。」

家庭科の授業中しか
見てねぇんなら、
一学期のカップケーキとか
みそ汁に粉吹き芋とかしか
知らねぇんじゃ…と、
一応は把握していたらしき、
さすがは保護者の
ゾロさんが続けたのへ、

 「そんだけじゃねぇって。
  今年のバレンタインデーに
  ホールケーキくれた子が
  いたじゃんか。」

  はい?

 「ちょっと待て、
  そんな仰々しいもんって。」

間違いなく
“本命”相手へのブツなんではと、
何でだろうか、
少々焦ったような声になった
聖封様だったが、
その視線がちらりと…
やや気遣うように
伺った先においでだった
ゾロはといえば、

 「ああ、あれか。」

何事も無さげに…
やや目を見開いての頷きつつ、
思い出したぞ
というお顔になると、
そのまま
くすすと吹き出して見せ、

 「けど、
  あれって
  お前が全部食っちまったから。
  俺には今更
  味も何も
  判断出来んのだが。」

 「ありゃ、そっかぁ。」

 「…ちょっと
  待てってお前ら。」

そういう
しっかりした品だったってことは
“本命”への
贈り物だったんじゃあと、
重ねて…
伝えようと仕掛かった
ミスターだったものの、

 「連名だったから
  それはない。」

 「そうそう。」

 「連名?」

同じ部やクラスの誰子ちゃんと
一緒に作りました〜ってか?
でもそれじゃあ、
腕前の物差しには
やっぱり不向きなんじゃあと、
矛盾を指摘しかかったお兄さんへ、

 「だから、
  俺とゾロへっていう
  連名だったんだって。」

 「……何でまた
  お前まで、
  女子高生へ
  名前を売っとるか。」

 「知らねぇよ。」

  おあとがよろしいようで〜〜vv






   ◇◇


ケーキにまつわる話で
何だかややこしい揉めようをした
男3人だったが、
それもまた
“イマドキ”ということだろか。

 「まま、
  男が甘いもん
  喰っちゃいかんなんて
  法はないんだしな。」

そうと言いつつ、
ダークスーツの
一体どこへ
隠し持っていたんだか、
お持たせの
プチケーキを皿へと取り分け、
ほれと坊やへ
供して差し上げる聖封殿であり。

 「うあ、美味そう〜〜〜vv」

いちじくのタルトに、
洋梨のジェレが
トッピングされたミニショート。
パステルピンクが愛らしい、
イチゴクリームのモンブランに、
バニラと抹茶のアイスクリームの
ドームが花を添え。
スライスしたマンゴーが
オレンジ色の
扇子みたいに飾られていて、
トレイの上は なかなかに涼やか。

 「欧州の方では
  ブランディのあてに
  チョコってのは
  定番中の定番だし、
  食後のデザートにって、
  甘いケーキを結構食うし。」

アメリカのデザート事情も
なかなかのもんで、
近年は
メタボリックへの危機から
随分と注意を払う人も
増えたというが、
それでも
カロリーの高いクリーム系統のを
どどんと山盛りで食す人は
男女に境がないのだとか。

 「俺が不思議なんはサ。」

こちらはゾロが用意してくれた
烏龍茶の冷えたのを、
うんま〜いっと
グラスに半分ほども
飲み干してから、
開いてあったページを
とんとんと指差したルフィさん、

 「これはマカロンだから、
  まあ何とか
  許容の範囲だけどサ、
  外国のケーキって、
  なんでああも
  青や緑のクリームで
  飾ってあんだ?」

そうそう、
特にアメリカの
クリームスィーツって、
殊更に寒色系のクリームを
使ってませんか?
淡いニュアンスのある
グリーンとか
シャーベットブルーならまだしも、
薔薇の葉っぱだけとかなら
まだ判らんでもありませんが、
ブルーハワイ色一色の
ホールケーキとか
青紫のデコレーションが
乗っかったカップケーキとか、
すごいセンスなぁと
ただただ感心しますものね。
男の子の
ースデイケーキだから…
とかなのかなぁ?

 「これ言うと、
  産地の人には
  ごめんなさいだけど、
  俺、やっと最近、
  紫イモのタルトに
  馴染んできたとこだしさ。」

でもアレはあれで
自然の色じゃん、と。
うまく言い表せない何かへ
むずがるようなお顔になる
坊やなのへ、
お顔を揃えていたお兄さん方、
お顔を見合わせくすすと苦笑。

 「まあ、
  そういうところにも
  “好み”の主張が
  出るのかもな。」

と、破邪さんが
なだめるような声音でいえば、

 「青いふりかけかけても
  バクバク食っちゃうのかもだな、
  そういう地域のお人はよ。」

と、聖封さんが
肩をすくめて見せたりし。

  でもでも
  実際のところは
  どうなんでしょね?

  どんな色味でも
  それが美味しいと判ってりゃあ
  関係ないんじゃね?

  いやいや、
  自然世界にない色は
  さすがに食いたい思いには
  連動しなかろ…と、

  お兄さんたちが
  論を交すの見上げつつ、
  無邪気な坊っちゃん、
  そりゃあ美味しい
  デザートトレイを
  ぺろりと完食したので
  ありました。





   〜Fine〜  11.09.18.

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