■天上の海・掌中の星 3

□お月見、真ん丸vv
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うんと
こっくり頷いた坊ちゃんが、
そのまま説明に入り、

 「ゾロが言ってるように、
  ホントは先週が
  最初の授業だったん
  だけどもさ。」

 「だろ?」

風向きが変わって、
キッチンのいい匂いが
こっちへ届いたか、
くんくんと
鼻を立てるようにした
坊っちゃんだったので。
ああそうだったと
主夫殿も手筈を思い出し、
おいでおいでと
ダイニングまでを先導する。
揚げ立てのカツが
香ばしい匂いを放ち、
シメジとマイタケと
エノキのあんは、
そのまま
具沢山のとろとろスープ
として食べても、
カツに熱いままかけても、
ほろほろとろりと
ほくほく温か。
甘くないクレープで包まれた
裏ごしカボチャは、
やあらかいコロッケ風で、
なんかケーキみたいに甘くって。
キュウリとシラスの酢の物は
ちょっぴり甘いめで、
どれもこれも大好物だと、
いやっほうと手を叩き、
さっそく席に着いた坊や。
箸を短めに握ったの、
これこれと注意されつつも、
お口は説明を続けており、

 「でもな?
  問題集があと18頁も
  手付かずだったからさ。」

 「…ちなみに、
  全部で何頁なんだ。」

 「80頁だ。」

 「そ、そうか。」
  (意外と頑張っては
   いたんだな。)チョー失礼

えっへへぇと
ほっかほかのカツを、
まずは素のまま、
さくりほふほふ、
柔らかジューシーvvと堪能し。
次はえとえと、
キノコのあんがいいかな、
でもでも
特製タルタルソースも
捨て難いしなと、
小首を傾げて悩みつつ、

 「どうしよーって
  チョー困って寝たらば、
  夢の中に
  誰か出て来てサ。」

 「誰か?」

怪訝なという方向で
訊き返されたのへも
気づかずに、
おおとくっきり頷き、

 「数学のせんせえとやらが
  苦手なんだな?って
  訊いて来たからさ、
  苦手っていうんじゃなくて、
  ただ、
  明日はちょっと
  会うのがキツイかなって。
  ……あ、明日ってのは
  先週の時点での明日だぞ?」

今日の明日じゃねぇからなと、
わざわざの
注意訂正をしてから、

 「そしたらさ、
  先週の数学の時間に、
  せんせえ
  間に合わなかったんだな。」

 「……間に合わなかった?」

うんうんと大きく頷いた
ルフィの言い分だけでは
要領を得なくて。
のちに黒須せんせえこと、
コウシロウ先生に
訊いてみたところが、

 『ああ、その話ですか。』

そりゃあ朗らかに笑いつつ、

 『何でも、
  学校へ行こうと
  車を出したのに、
  どうしてだか あちこちで
  工事中だの
  迂回してくださいだの
  という規制にぶつかり通し。
  それと、
  知ってるはずの回り道で
  何故だか迷子になりかかり、
  同じご町内を
  ぐるぐるしちゃった挙句、
  とうとう
  学校に向かうための
  幹線道路には
  出られなかっただとか。』

そんなとんでもない
お話をしてくれて。

 『結界でも
  張ってあったんで
  しょうかね?』

 『…先生、
  それって
  しゃれになりません。』

そんなことがあったため、
数学は自習となって、
宿題の提出も延長されたらしく。

 「ゾロへ言うのも
  なんだけど、
  神様って居るんだなぁって、
  そりゃあ
  有り難くってさvv」

 「確かに、
  俺へ言うのはナンだな、
  その話はよ。」

この霊感少年が、
一体誰へと念じたものやら、

 “いや待てよ、
  学校ってものが
  判る奴じゃないと
  意味ねぇはずだが。”

かと言って、
最近亡くなったばかりという
御霊にそんな力はない。
あったなら
おっかない悪霊に
なりかねない。(おいおい)

 “どこの誰だろ、
  いやさ、単なる偶然か?”

う〜んう〜んと
腕組みして考え込んでる間にも、
健啖家の坊やは
大きいお茶椀に
2回もお代わりして、
心づくしの晩餐を平らげると、

 「ゾロ、ゾロ、
  今夜は満月だぞ?」

 「おお、チョッパーが
  天炎宮から
  ススキを
  持って来てくれてる。」

南の聖宮だが、
少し涼しいエリアもあると、
そういや こないだ
言っていたトナカイの聖獣さん。
そこから
銀色の穂のススキを
摘んで来てくれたらしくて。
涼風のそよぐ中、
虫の声もするのが
何とも風情があって。
リビングに花瓶を出し、
三宝という台には
白い団子を積み上げて。
お神酒も要るのかな、
子供しかいない家だから
構わんだろなんて。
ほのぼのとした会話を
交わしつつ
見上げた夜空には、
東の方から
真ん丸な月が昇ってくるところ
だったそうな。


 「……そういや、
  あの仔猫の久蔵とやら、
  月夜見の力から
  生まれた眷属とか
  言ってなかったか?」

 「えー、そうだっけ?」


 おあとがよろしいようで…。




   〜Fine〜  11.09.12.





猫又に操られちゃった
数学のせんせえ
だったんでしょうか?
結構遠い町なのに、
なんて怖い子。(こらこら)

久蔵ちゃんが
よく判らない方は、
昨年の拙作
『とある真夏のサプライズ♪』
『昨夜はハロインだったので』を
どうぞ。


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