■天上の海・掌中の星 3

□まだ六月、もう七月
2ページ/2ページ


   ◇◇


三白眼で睨まれたもーりんが、
すごすごと退散したところで
お話を戻しましょう。
お馴染みの腕白坊やも、
この、フライングっぽい
なんか変な六月の蒸し暑さには、
くったりしかかっていたようで。

 「俺、寒いのへは
  何とか“たいせー”
  あるんだけどもさ。」

 「たいせー…?
  ああ“耐性”な。」

そういや、
寒さへの愚痴は
あんまり聞いたことがないなぁと、
思い出してみるその端から。
イヤーマフが
お似合いだった笑顔とか、
豪雪に困ってる人がいるという
ニュースを聞くまでは、
雪が降ってるトコへ行きたいと
駄々をこねて見せた、
それは幼い膨れっ面とか。
男の子なのに
ミトンの手套が似合うのは
ぜってぇ反則だろと
思ったこととか、

 「……………。」
 「ゾロ? どした?」

急に表情が止まってしまった、
回想モードの破邪殿へ、
さすがに不審に思ったか、
おややぁ?と
お声をかけてる
坊ちゃんだったりし。

 「いや、何でもねぇ。」

 何でもなかないでしょうが。(笑)
 第一、普通はそんな暑苦しいもん、
 1カットでも思い出しゃ
 終しまいなハズですぜ、旦那。

 “…うっせぇな。////////”

 はいはい、
 茶々ばっか入れていては
 話が進みませんので、
 今度こそ
 退散しますって。(苦笑)

かの如く、
ついついネタにしたくなるほどに、
とんでもない猛暑が早々と、
まだ梅雨明けしてない
地域にまで襲い掛かった、
この六月であり。
昨年は冷たい雨が長引いたのでと
なかなか採れなかった
キュウリやトマトが、
今年は暑さのせいで
夏野菜が
片っ端から傷んでいるのだとか。
勿論、
人体への影響だって少なくはなく、
坊やが仔猫のお友達へ
こぼしていたように、
熱中症の危険を
もう構えねばならない
今日このごろ。

 「俺らは来週にも
  期末テストが始まるってんで、
  たんしく授業だから
  いいけどサ。」

ちなみに、
短縮授業だからと言いたいらしい。

 「小学生とか中学生は、
  七月も中程まで
  がっつり授業があっからサ。」

 「そうだな、
  チビさんたちが
  暑さで倒れなきゃいいがな。」

時々 近所の子供会の行事へ、
指導員として
出向いている関係で、
相変わらず
小学生からも慕われている
坊ちゃんとしては。
そういう行事じゃあなくとも、
そこいらで
汗かいてくったりしている
子を見かけると、
近場のコンビニだの
文房具店だの、
冷房の効いてそうなところまで、
連れてってやるように
しておいで。
それにしたって、
こんな早くに
真夏日だの猛暑日だのと
言われようと、
思わなんだのは誰しものこと。
元気が資本という子供らにしてみても、
この気候の急変には
ついてけなくともしょうがなく。
そしてそれは、
こちらもお元気の代名詞のような、
ルフィ坊やへも
言えること…なはずだったが。

 「そうだったよな、
  確か短縮授業へ
  突入してるはずだよな。」

それにしては、
いつまでも帰りは
三時のおやつどきというのが
変わらず。
それでと
弁当も毎日のように
作ってやってたゾロであり。
この暑さにも傷まぬようにと、
滅菌効果のあるという
ワサビシートを活用したり、
いっそのこと
四時限目の終わり頃に
学校までをひとっ飛びし、
作ったばかりのお弁当、
こそりと机の中へ
忍ばせてやったり。
色々と気を回して
ござったのだけれども。

 「しかも。
  さほどくったりもしないまま
  帰って来て、
  そのまま風呂へ
  飛び込む訳でもねぇ。」

 「だってせっかく
  涼んで来たのに。」

言いかかって
そのまま表情が止まった
ルフィだったのは、
お行儀悪く
ソファーの上で
体育座りしている自分を、
今更 省みたからじゃあなくて。

 「まあ、
  何とはなく
  気がついちゃあいたが。」

体育が
毎日あるはずがねぇのに、
水着とバスタオルを
連日持ってくし、
頭からほんのりと
カルキや水の匂いがする日も
ザラ…と来ては。

 「……うん。
  ホントは
  高校総体向けの予選にって、
  水泳部が
  使ってるんだけどもな。」

他の生徒は期末試験前の、
早く帰って
勉強しなさいモードと
なってる頃合いだってのに。
どうやらこの坊ちゃん、
学校のプールにて、
帰宅前にひとっ風呂…ならぬ、
ひと泳ぎをしてから
帰って来ておいでだったようで。
ちょっぴり怖々と
“バレた?”という
お顔になったのは、
勉強そっちのけでという
姿勢への反省というより、
保護者なのに
言ってなかったねという
“ごめんなさい”なのが
ありありしており。
上目遣いになっての
“あやや”というお顔なのが、
いかめしくも怒っているぞと、
それは厳粛な表情を
作っておいでだった破邪殿の、


  心へ響かぬはずがなく


 「だ〜〜〜、判ったから、
  その 子犬みてぇな顔わ
  辞めろ。」

 「子犬?」

何だ何だ、
そんな詩人みたいな
言いようしやがって。

だよな、柄じゃないってのvv

うっせぇなっ。///////

 「つか、
  いつの間に来やがった。
  こんの…っ。」

 「おや、お言葉だねぇ。」

悪友からの悪態が
飛び出す前にと、
確かに
いつの間に来てたんだという
間合いで割り込んで来た、
この熱さをも
涼しい風へ変えそうな、
さらさらした金の髪の聖封さん。
ルフィ坊やへ
すいと差し出したのは、

 「うあ、虹色のゼリーだっ!」
 「ただ
  色が違うだけじゃねぇぞ?
  全部別々の果物フレーバーだ。」

アイスクリームでってのは、
一遍に喰っちまうと
味の違いが
判らなくなるだろからなと。
しゃれた銀のトレイの上、
純白の長方形の皿に並んだ
宝石みたいなゼリーたちへ、
すっかりと心奪われている
坊やへだけ話しかけ。
うんうんと
無邪気に頷くルフィといい、
彼らのみにて
話が通じ合ってる模様。
そんな二人へ、
こいつらわ〜〜っと
微妙に口許曲げたゾロだったのは、
言うまでもなく。
とはいえ、

 「ゾロ、
  晩飯の後は これな?」

 「へいへい。」

今日のデザートだかんなと、
それは嬉しそうに言われては、
逆らえるはずもなく。
何だかんだ言ったって、
坊や優先の夏なのは、
デフォな人たちであるようです。




   〜Fine〜  11.06.29.





こちらのルフィくんなら、
プール三昧なのも
節電への協力だと
言い張りそうですが、
…実際のところは
どうなんでしょね?

「?? 何でだ?」

「だから。海や川と違って、
 プールっつったら、
 浄水装置とか
 動かしてるはずだからな。」

「だな。
 衛生何とかって
 法律もあろうから、
 そこは外せないはずだ。」

「ありゃりゃ。」

だったら
天聖界でバカンスだなとか、
言い出しそうな
ルフィさんです。
……豪気だね、
万年受験生。(こらこら)

ところで。
昨年は沖縄でしたが、
今年の高校総体は、
青森県、岩手県、
秋田県、宮城県が舞台の
“北東北総体”。
日程は、
平成23年7月28日(木)
〜8月20日(土)だそうです。

 http://www.2011soutai.jp/



前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ