■天上の海・掌中の星 3

□彼らの事情♪
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 *いつぞやの別部屋の
  猫のお友達とのお話です。
  鼻が詰まってて
  集中出来ないので、
  何だこりゃ度合いも高めですし。
  (おいおい)
  オリキャラが出て来る話は
  ちょっとという方は
  自己判断でご遠慮ください。


記録的な寒さと
豪雪とに襲われ中の、
この冬の日本列島だが。
それでもさすがに、
一番冷えるとされる二月も
その終わりが見えて来たせいか。
2回に1回は
妙に生暖かい雨の日が
訪れるようになり、
上着や手套はまだまだ要るものの、
マフラーは…
時々邪魔っけになるかなぁ
という案配の日があったりし。

 「だからって、
  忘れて来ていいって
  こっちゃねぇからな。」

 「うん。」

あんまり
褒められたことではないのは
本人も承知か、
頬をほりほりと指先で掻きつつ
“たはは…”と
面目なさげに笑う坊っちゃんへ。
しょうがねぇなぁと
口許をひん曲げて見せつつ、
だがだが、実をいや
こちらさんも
さほど怒ってまではいない、
緑頭の保護者代理様だったりし。
ルフィの通う公立高校も、
三年生が
私大の受験期間に入ったのと、
そこをこそ受験する
中学生らの入試が近いせいか、
先生方も職員の皆様も
いろいろな準備に忙しく。
それとの兼ね合いか、
早い目の期末考査が
終わったと同時、
今日から試験休みに
入ったらしいのだが、

 『ルフィ、
  お前マフラーして
  行かなかったか?』

 『あれぇ?』

ただいまとのお声も高らかに、
昼過ぎに戻って来た
坊ちゃんの首回りが
随分とスカスカだったため、
出迎えがてらに
一応はと訊いてみたところ。
教室を出るときは確かに巻いていたが、

 『どこで外したか覚えてねぇ。』

…との お返事で。
電車の中じゃあ暑かったから、
巻きつけてた前を
緩めた気がする。
そのままこっちに着いて、
えとえっと。
お腹が空いたんで
コンビニに寄ったし、
菱屋のコロッケも食べた。
そうだ、おばちゃんから
ソースがつくから
気をつけなねって言われたから
そこまでは巻いてたと、
ギリギリ何とか
思い出したルフィだったので。
正式なお昼ご飯、
かりっと揚がった
エビのフリッターつき、
ドライカレーピラフ(大盛り)を
平らげてから、
寄り道の経路を逆に辿りつつ、
どっかにないかと、
商店街までの道を
ほてほて探しに出て来た
二人だったりし。
昼下がりの住宅街には
人の気配も少なくて、
もう少し経てば
保育園のお迎えのお母さんたちが
ついでに買い物だと
行き来もするのだが、と、
ゾロの方が思い出している辺り。

 「…何が言いたい。」
 「んん?
  どした? ゾロ。」

あはは、
別にいいじゃないですか、
ご町内の
タイムテーブルに詳しくたって。
そんなワケで、
まるきり無人で
貸し切りのような通りをゆく
二人であり。

 「どこだったのかなぁ。
  菱屋さんから後は、
  すぐにこっちの道へ
  入ってたと
  思うんだけどもなぁ。」

忘れ物が多いうっかりさんなのは、
今に始まったことじゃあないし、
坊やご本人のみならず、
破邪さんも
割と大雑把な性格なので、
多少のブツは
“ま・いっか”扱いになることも
多いのだが。

 「兄貴からの
  クリスマスプレゼント
  だろうが。」

 「うん…。」

日頃は地球の
やや裏っ側にあたるカナダで、
アーチェリーの修行、
もとえ、留学中のエースが、
珍しくバイトをしたんでと、
去年のクリスマスプレゼントに
送ってくれた贈り物。
冬場は寒い土地ならではの、
そりゃあ
暖かいカナダ産の逸品であり、
色や柄もあか抜けていて、
ルフィ本人も気に入って
使っていた代物だっただけに。
こう見えて、失くしたご本人も
かなりがところ
ドキドキしているようであり。

 「とはいえ、
  こうまで何にもないところで、
  わざわざ外すって
  タイミングもなかろうにな。」

買い物していてだとか、
友達と
ふざけ合っていた弾みで
というならまだ判るが、
こちらの住宅街へ
入って来るのは彼一人。
駅までは一緒の顔触れも、
そこで三々五々
散り散りになるらしく。
風に撒かれてすべり落ちたんかなぁ、
でもだったら、
にぎやかな柄だから、
すぐにも落ちてんのが
見えて来そうなもんだけどと。
舗道から風で飛ばされてないか、
通りに向かって
車庫のあるお家の庭先なんかも
さりげなく見やりつつ、
ほてほてと
ゆっくり歩んでいた二人の視野を、

  さささっ、と

不意を突くよに、
そりゃあ素早く
駆け抜けた影があり。
人影こそないけれど、
よくよく耳を澄ましてみれば、
どこかのお宅で見ているものか、
バラエティ番組の効果音だろう
複数の笑い声も聞こえて来るし。
向こうの通りからのそれか、
スクーターが走る響きもする。
のどかであっけらかんと
いいお天気の下、
乾いたアスファルトの通りを
たかたかたかと、
それは軽快に右から左、
正確に言や、
こっちの歩道から飛び出してって、
向かい側のお家の脇の
隙間に飛び込むように
駆けてったのは、

 「…ネコだ。」
 「しかも、
  誰かさんの襟巻きを
  咥えてたよな。」

端っこを咥えてたなら
長々と引きずっただろうが、
上手いこと
真ん中辺りを咥えており。
まるで騎馬武将が幟をはためかせて
あっと言う間に
駆け抜けたような姿じゃああったが。
それでも加速していたから
宙に躍っていただけで、

 「あのまま路地や隙間を
  引っ張り回されたなら、
  どっかで引っ掛けて
  ずたぼろにされるか。」

 「あやや…。」

 「それに猫の身も危ういぞ。」




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