■天上の海・掌中の星 3

□まだ六月、もう七月
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この春は、
去年みたいに
いつまでも寒くて、
カラッと晴れて
夏日になったかと思や、
すぐさま上着が要る日和に
戻ったところは
一緒だったのによ。
梅雨ンなるのも遅くって、
台風の加勢でっていう
雨の日が多かったんで、
生暖ったかい雨になるのは
そのせいだって思ってたくらいで。

  だっていうのにサ

そういや、
衣替えに入った途端に
肌寒くなったところは
いつもの年と一緒で。
節電しなきゃいけないからってことで、
やたら
“クール・ビズ”って
言われてた割に、
今日からいきなり
アロハは寒いだろうって、
ニュースとかでも言われてて。

  そうだったのになぁ

そうなんだよな、
気がつきゃあ そうなんだ。
下敷きじゃあ用が足りなくて、
道端でもらった
どっかの宣伝用のウチワ、
ついついガッコにまで
持ってってたりしてサ。
俺らも大人のクールビズ見習って、
短パンとか
七分のカーゴパンツって制服に、
なんねぇかなって
話ししてたりするし。
商店街には
七夕の笹飾りが
あちこちで並べられてるし、
何より、
今週末からは
もう七月に突入すんだけどもサ。

 「…何でこんな暑いんだろな、
  まだ六月だってのによ。」

 【 みゃうにぃ。】

 「だよなぁ。
  油断してっと
  熱中症ってのになるから、
  ちゃんと水を飲まないとな。」

 【 にゃにゃうvv】

 「え? 
  海 行ったことあんだ、久蔵。」

 【 にゃにゃ〜んvv】

 「凄げぇな〜。
  ネコなのに
  波が怖くないんか、お前。」

何でそんな詳細まで
話が通じてるんだろう、
猫が水も平気というのは
珍しいことじゃあるけれど、
そもそも
“海”って単語は
どんな“にゃう”を
変換したのかなと。
どこかで吹っ切れたと
していながらも、
時々我に返っては
“不思議だなぁ”と
感じ入ってる
キュウゾウんチの
七郎次さんだってのは。
あいにくと
電話の向こうのことなんで
ルフィ坊やへは見えなくての
伝わって来ないのだけれども。


 “…姿見えてねぇ相手と
  猫語で会話出来てんのに、
  そこへだけ
  その理屈ってのも
  おかしなもんだがな。”


おおお、選りにも選って
こういう理屈のお話へ
破邪さんから
突っ込まれてしまったぞ。

 「……んだとォ?」

……素顔で
十分おっかないんだから
わざわざ凄むのは
無しだぞ、破邪殿。





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