■天上の海・掌中の星 3

□例えばこんな応用篇?
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 結局やっぱり この春も、初夏並みの気温になったぞ、梅雨前だのになと人々を浮き立たせたかと思や、ど〜んと10℃近くも寒くなったり。気温の乱高下が起きる破天荒っぷりは健在で。油断して気の早い半袖何ぞで出歩けば、てきめん、軽く風邪を引いてしまうほど。


 「…久蔵〜、
  元気してるか〜?」

 【 みゅうにゃ。
  …みみゃう・にゅ?】

 「お? いやいや、
  俺は元気だぞ?」

 【 …みぃまう。】

 「嘘なんか ついてねぇもん。
  そっちこそ
  アロウとは
  仲良くやってんのかよ。」

 【 みいにぃ・みゅうにう。】

 「誤魔化してなんか
  ねぇってば。」

 【 まぁうにぃあっ。】

 「判った判った、お見通しか。
  言うってばさ。
  実はサ、俺のガッコ、
  今週から“ちゅーかん”なんだ。
  テストだ、テスト。」


 電話友達、テレ友の仔猫さんにあっさりと見抜かれるほど、裏がないと申しましょうか、隠しごとが出来ない坊やなのは今更ですが。

 “なんで
  ゴールデンくんの名前まで
  判るんだろか。”

 向こうの保護者のお兄さんが、久蔵は“にゃうにゃう”としか言ってないはずなんだがなと。きれいな所作にて かっくりこと小首を傾げてしまったのは、あいにくと見えなかったルフィくんだったのでした。(今日のわんこ風に…。)


  ……って、
  開始したそのまま
  いきなり終わりそうに
  なりましたが。(笑)




 ガッコ大好きなルフィくん。予防接種の注射だって怖くねぇぞの坊やが、唯一の苦手とするものが…とうとうやって来た模様でございます。春休み前にあった前学年の期末テストから数えて 約4カ月弱ぶりでしょうか。結構 間が空いていたがため、重圧もまずまず重いらしく。

 「つか、別にその結果で
  降格されるとか、
  特典能力むしり取られる
  ってんじゃなかろうよ。」

 集中力がつくようにとの紅茶フレーバー、特製ジャンボシュークリームを差し入れてくださった金髪の聖封様が、どこか怪訝そうなお顔で訊いたのへ、

 「? 何だなんだ?
  ゾロやサンジって、
  点数とか評価とかが
  落ちたら
  そんな罰則受けんのか?」

 そんな疑問符つきのお声が返って来たのとほぼ同時、自分であっと気づいてたサンジが“しまった余計なことを言ってしまった”と口を塞いだのへ重なったのが、

 「このあほうっ。」

 緑頭の破邪様からの骨太な拳骨だったりし。ごつんと頭頂部へ落とされたそれへ、

 「痛ってぇな、
  お前が偉そうに殴るのは
  筋道おかしいだろうがよっ。」

 「一応は俺が保護者だからだ。」

 「俺が口すべらせたのは、
  その管轄とは
  微妙に外れてねぇか。」

 「俺まで、
  そういうドジ踏んでるように
  聞こえっだろうがよ。」

 「そういう方向で
  ムッと来ただけなんなら、
  やっぱ殴るのは
  筋違いだっつうの。」

 単なる口喧嘩だってだけでも結構な応酬だってのに、動かしているのは口だけじゃあない、拳とつま先とが丁々発止とばかり、何合もぶつかり合いの咬み合いのしている激しさへなだれ込んでおり。

 「なあなあ、
  何で二人とも
  怒り出したんだ?」

 しかも同時だったってことは、ゾロにでも判るような簡単な理屈でってことだよなと。喧嘩の荒々しさにも今更動じず、こちらさんはあくまでも平然としたままで。ふんわりシュークリームに ぱくつきつつ、自分の保護者様を捕まえてドえらい言いようをするルフィへと、

 「……あのな、それはな。」

 そこんところの微妙な機微のようなもの、こちらさんはさすがに感じはしたらしいチョッパーが、だがまあ、そういうところにこだわらないのが、この子のいいところだしと思い直すと。お兄さんたちに代わっての説明を付け足し始めて。

 「俺らの場合に限らず、
  別の世界のことって、
  あんまり話しちゃ
  いけないもんなんだって。」

 「? 何でだ?」

 「だからさ、
  例えば
  未来の世界を知ってる奴が、
  何月何日に
  何か起こるぞって教えちゃうと、
  それで困る人は
  ちゃんと備えをするから、
  そこからの未来が
  変わってしまうかも
  しれないだろ?」

 「うん。」

 「それと同じようなことで。
  例えば…
  こういう前兆があったら
  こんなことが起きるぞってのの
  絶対本当な
  からくりがあったらどうする?」

 「???」

 「こんな形の雲が出たら
  大きい竜巻が起きるぞとか、
  どこそこの猫が
  “わん”と聞こえるように
  鳴いたら
  近々男の子が
  生まれるぞとか。」

 「……どういう喩えだ、それ。」

 チョッパーの喩えが微妙すぎたか、ますます小首を傾げた坊やだったが、そういうのはSFやファンタジーでは もはや鉄板レベルのお約束だ。例えば、未来人が名乗った名前が数字や記号になってるならば、未来ってそんなに人口が増えたんだろかとか、機械管理がそこまで進んでいるのかだとか、それが人種にまたがっての共通だったならば、国境とかの別は無くなっているのかなぁとか、そういうことが推し量れるワケで。

 「…言わなきゃ
  判らなかったのかもな。」

 「いや、
  そういう問題じゃないし。」

  そういやお前、
  たしぎとかいう破邪が
  ルフィの遠い親族の
  生まれ変わりだってこと
  修正してねぇだろ。

  ああ?
  しょうがあんめぇよ、
  そういう空気じゃ
  なかったときの話だし、
  それに、
  そういう宗教観念は
  普遍の代物じゃね?

  人を大雑把野郎扱いするお前が、
  それ言うかな、ああ"?


 大の大人の掴み合いの喧嘩の方は、なかなか終わらない模様である。(笑)





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