■天上の海・掌中の星 3

□おーる・おあ・なっしんぐ?
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明日の朝方は
この冬一番の
冷え込みになるでしょう
というフレーズを、
連日聞くようになった
睦月の下旬。
今年の冬は、
このところの“暖冬”慣れしていた
日本全土を、
これでもかという
実践によるスパルタにて
震え上がらせ続けで。
底冷えのする寒い寒い日が、
ほんの数日だけという
短さではなく、
ずっとずっとという
長い目のスパンで続くのは
なかなか堪えるその上に。
日本海側の北国へは
途轍もない豪雪を運んでもいて、
それでなくとも大変な雪かきを、
ほんの1日でも休もうものなら、
屋根にうずたかく積もった雪塊が
滑り落ち、
それに玄関が埋まって
閉じ込められるという事態も頻発。
また、雪かきをするにも
一人暮らしの年寄りが
自分で当たらねばならないという
集落も少なくはなくて。
そんなニュースを
リビングのテレビで
見ていたルフィが、
やっぱりなことをば言い出した。

 「行けるもんなら…って言うか、
  なあなあゾロ、
  これへ俺とか
  手伝いに行っちゃあダメかな。」

 「学校サボる気か。」

だからさ、
ゾロのどこでもドアで
あっと言う間に。
誰がドラえもんだ…という
お約束のやり取りがあってから、

 「行ったら行ったで、
  お前,際限なくならんか?」

 「??」

どういう意味かが
判らないというお顔になったのへ、
湯気の立つマグカップ、
坊やの好みの
甘いココア入りを手渡しながら、
う〜んとだなと、
自分の頭の中にて
まずはのシュミレーションを
したゾロが、

 「とんでもなく
  雪が積もってる家ってのは、
  一軒やそこらじゃないはずだ。」

 「おお。」

そうだろうなと
頷いたルフィだったのへ、
まずはの1軒目へ手をつけて、
さあ次だ次と、
どこまで手を貸せるかな。
お前ならまま、
物凄く頑張って、
子供とは思えないほど
助けてあげられもするんだろうが、

 「それでもな。
  見回しただけでも
  7、8軒はあったとして、
  1日じゃ
  せいぜい3つか4つ、
  学校行ってからともなりゃあ
  1軒がやっとかもしれん。」

 「……うん。」

そこまで言われりゃあ、
破邪さんが何を言いたかったかも
わかるというもの。
手が回らなかったお家には
不公平になるかな、と。
ますはと気づいたことへ
“う〜む”と唸った
坊っちゃんなのへ、

「それは向こうさんだって
 とやかくは言うまいよ。
 そうじゃあなくてだ、
  お前の側が
  気に病むんじゃねぇかと
  いってんだ。」

「それは…そうかなぁ?」

やんちゃで腕白なお元気坊やだが、
その胸の内の何処かに、
忘れちゃいけない
ことというの、
柄にないほど深いそれを
ちゃんと持ち合わせてもいる子。
全部を救えないのなら、
そんな半端な手出しはするな
…とまでの極端は言わないものの、
そんな結果や現実に、
この子が心を痛めてしまうのが、
ゾロにしてみりゃ堪らない。
そうかといって、
自身の
“人ならぬ身”だからこそ
持ち合わす力を
大盤振る舞いするわけにもいかぬ。

“こういう
 葛藤もどきを抱えて迷ってちゃあ
 公正じゃなくなろうから、
 神話なんぞに
 出て来る神や天使は、
 時々とんでもなく
 無慈悲な裁量を下すのかもな。”

支配階級の
トップたる存在もそうだし、
組織の上層部や、
叩き上げではない秀才が
飛び級にて就いたような
高級官僚たちもそう。
血も涙もない裁定や、
そうと決まっておりますから
という杓子定規な対処しか
しないなら、
いっそ○×式のコンピュータだけ
置いとけばいいんじゃないか、
その方がよっぽど
“間違い”はなかろうし、
人件費だって
安く上がるんじゃない?と
皮肉を込めて思った時期も
あったれど。
情に流されていては
キリがないってこともあろうし、
それへと決まりごとを当てては
惨すぎるような例が
例えばあったとしても、
それが現今の決まりなら
守らねばならないとするのは、
例外を一つ認めれば、
色んな難癖やら斜め読みをして、
じゃあ何でこっちはダメなんだと
ねじ込むケースもきっとあるから。
困った事態を見つけたら、
その都度、
そういうケースは
どう対処するのかを
検討した上で補正してゆくのが
正しい対処なのであって。
そこをサボってるようなら、
なるほど
そんな組織は畳んでしまえと
思うけれど、
思わぬ事態というのへ、
係の人も口惜しく思いつつ、
手が届きませんという対処にしか
ならぬのもまた、
完璧ではない人間の
やることならではなのであり。
願わくば、
そういう見落としで
辛い思いをする人が
弱い人ばかりではありませんように、
尚且つ、
そういった落ち度を
落ち度と認められる器量のある人、
口惜しいと思える
義に厚い人がこそ、
裁量を下す立場に
ついておいででありますようにと
…願うしかない昨今だってのも、
何だか情けないのでは
あるけれど……。

  ……などなどという、
  ややこしいいことを
  う〜んと考え込んで
  いたものだから。
  それこそ柄にないこと
  だったのだろか。
  だからこその
  隙だらけであったものだろか。



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