あるばとろす


□虹色の約束は守られたか?
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 夏島海域が近いのか、陽射しが日に日に強くなって来た。頬を撫で、髪を梳いてゆく潮風が心地よく、いかにも"爽快"な濃い色の青空が頭上には広がる。

「ナミ〜、次の島はまだか?」

 船の舳先、羊の頭に相変わらず乗っかって、我らが船長さんが無邪気なお声で訊いてくるのへ、
「じきよ、じき。」
 こちらもにこやかなお返事を返す航海士さんで。これが昨日までなら"日に何度同じことを聞くかっ"と怒ってしまうところだったが、今日は別。ログポースのぶれもなく、小型の海鳥がちらほらと姿を見せている辺り、陸が近い予兆に他ならない。前に立ち寄った島で聞いた話では、次の島はなかなか賑やかに栄えている土地なのだそうで。幸いにして…ちょいと臨時収入を得る機会が続いたがため懐ろが温かいので、食料や消耗品、備品に資材の他に、洋服や雑貨小物といった、ちょっぴりおしゃれなものも見て回れるかもねと、久し振りに女の子らしいワクワクにときめいているからで。
"まずは宝石やインゴットを少しばかり換金しなきゃなんないけれど。"
 世界政府公認の自治都市だか国家だかなため、しっかりした市場があるとのこと。なので、いい加減な連中に無闇にボラれる…もとえ、相手の言い値に振り回されて安値を吹っかけられるというよな恐れはなさそうだが、逆に言えば海軍の監視の目もあるということか。
「そうは言っても、基地や分局がある訳ではないようだし。」
 小さな出張所規模の宿営地がある程度。海賊や外敵向けの海軍よりも内的治安維持のための警察公安組織がきっちり配備されてるってトコでしょうねと、ロビンが言っていた。外地から気安く遊びに来てもらうためにも、観光主体の商業都市にはあまりに厳つい武装は向かない。とはいえ、治安は良い方が安心。そこで小回りの利く警邏組織の方を重視しての配備になってる筈だということで。
「ん〜んvv なんか楽しみvv」
 いつもいつも、男衆たちの巻き起こす騒動に引っ掻き回され、命が縮むような想いばかりさせられている身。今度ばかりはのんびり伸び伸び、羽を伸ばして過ごすぞと、ご機嫌さんな様子のマドンナ。
「ナミさ〜ん、ロビンちゅあ〜ん。お茶が入りましたようvv」
 キッチンからシェフ殿に呼ばれて、は〜いと良いお返事を返した年齢相応、無邪気なお嬢さんであったのだった。


  「…嵐になんなきゃ良いけどな。」
  「え? ナミって嵐を呼べるのか?」
  「さすがはウチの航海士だっ!」
  「………お前ら、
   まさか本気で言ってんのか?」


  ― こらこら、あんたたち。(苦笑)




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