■天上の海・掌中の星


□星宵散歩
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秋の夕焼けがそれはそれはスペクタクルなまでに綺麗なのは、陽が沈んでゆく角度が絶妙なのと、気温の下がった空気が、他の季節に比べて随分と乾いてて、埃をくるんで浮いてる水滴っていうのも少なくなってて、とっても澄んでいるからなんだって。れが関与する現象は夕焼けに限らないんだそうで、秋は遠くの物音がよく聞こえたり、星がくっきり見えたりもする。この辺は都心に比べりゃ郊外な方で、町のネオンだって少ない筈なんだけど、

『そんでも少ないよな、こりゃ。』

 ゾロはそう言うと、窓から見える星空を、ちょっと小馬鹿にするような澄ました顔つきになって斜はすに見やった。

『? そうなんか?』
『ああ。』

 満天の星々っていうのはこういうのを言うんだなって、それが納得いくくらい、空の目一杯に隙間なく敷き詰められた星の群れ。夜の闇色に染まった天蓋が重たげで、今にも迫って来るようにさえ見えるんだぜと、それを我がことのように自慢してくれたものだから、

『俺も見たいっ!』
『………っ。』


 破邪精霊様が"しまったっ"と自分の迂闊さに気づいた時にはもう遅く。ルフィ坊やはもうもうすっかりと、その"満天の星空"を観に行くんだという気分になり切っていたのだった。
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