■ルフィ親分捕物帖


□いづれがあやめか、かきつばた
1ページ/5ページ


富士の麓を駿河に向けて、そこから更に木更津まで向かったその手前。
元はその富士のお山が弾けた折に溢れ出た火山灰から成るという平野地に、
東照権現さまが御開府して ン十年の花のお江戸…が舞台ではなくっての。
それでも和風な風習や装束がさも似たりな此処は、
藩主ネフェルタリ・コブラ様がご統治の、
気候も人も豊かで穏やかな“グランド・ジパング”というお国。
穏やかとは言え、粋で いなせなお人もいれば、
お腹に何にも含まぬところから ついつい言い過ぎたその揚げ句、
喧嘩っ早いところもあってのちょっとした諍いは結構多く。
かわいらしい喧嘩どまりで済めばいいが、それがこじれての刃傷沙汰になったり、
はたまた欲にからんだ禍々しい事件が起きたりと、
人が多く寄り合う土地ゆえの騒ぎも実は数多く。
それらへと早急に対処し鎮めるために、そんなこんなを合理的に裁いて成敗する機関や組織も発達しており、
奉行とその配下、与力や同心、岡っ引きが、治安維持のための警邏警戒を怠らない。
ところで、喧嘩や修羅場の描写に“やっちゃ場”なんてな言い回しを使う読み物やらドラマやらがあったりしたそうだが、
これは本来、東京の青もの市場のことを指す言葉で、やっちゃというのはセリのこと。
ある意味で戦いではあろうし、勇ましくも荒々しいところから、
喧嘩関係の勇んで乱暴という描写にも使われたものが一人歩きしたらしい。
勇ましいと言えば、鉄火場という言い回しもあるが、
これはそもそも鉄砲が弾き出す弾丸や砲火が飛び交う戦場というのが元来最初の意味。
そこから転じて“博打場”を指す隠語となり、それから勇ましいという意味に使われ、
伝法な気性を指す“鉄火肌”なんてな言い回しに使われるようになったのだとか。
威勢がよくて乱暴に見えても、心根は気のいい、飾らない人性なのが江戸っ子とされていたが、
このお話の舞台、グランド・ジパングの住民たちも、その殆どはそんな気のいい者たちばかり。
だからこそ、そんなお人よしたちの、
足元を掬おうの鼻を明かそうなんていう悪人共がはびこることだけは許せんと。
その細腕を剥き出しの腕まくり、今日も今日とて頑張っちゃうのが、
背中で躍るトレードマークの麦ワラ帽子もお元気な、
麦ワラの親分こと、岡っ引きのルフィ、その人だったりするのだが。
何せまだまだ駆け出しのお若い衆なので、時々は暴走もし、やり過ぎもありで、
お手柄の1.5倍くらいは余計な大暴れをしちゃうのが玉に瑕。
彼を配下に使っている同心のゲンゾウの旦那も、
もちっと落ち着いてくれたらなぁと、それを案じて頭痛が絶えない日々を送っておられるのだが…はてさて今回の騒動は?



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ