■ルフィ親分捕物帖


□梅は咲いたか 桜は…
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 今年の冬は暖かだったね。ああそうだな、結局町には雪が降らなんだ。そんな会話が交わされていたものが、そろそろお彼岸、それが済めばいよいよ桜の季節ですねぇなんて言い出した今頃になって、急にすこぶるつきの寒さが戻って来たからたまらない。数値的にはいわゆる“平年並み”なのだろうが、その直前までの日々が冬場には異様な暖かさだったから。その落差の大きさから“途轍もない冷え込み”だと感じられたのも無理はない。粋で洒落者な江戸っ子は、暦の上での春を迎えたらもう綿入れは着ない、タビも履かない、なんてのが常だとされたそうだけれど、このお話の舞台は“グランド・ジパング”という架空の世界だからだろうか。大慌てで仕舞ったはずの袷あわせや綿入れを引っ張り出す者も少なくはなかったとか。そして、そんな世間様の恐慌ぶりに紛れての、小さな小さな事件もあったりし………。



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