■大川の向こう
□一年の計は…?
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お正月と言えば…の風物詩。日本のそれはといや、正装しての初詣でにお年始回り。お屠蘇で祝って、お雑煮食べて。凧揚げに独楽回し、追い羽根つきにカルタとり。すごろくや福笑いなどなどは、まま、家の中でやる遊びだとしても。広場や町角では、お年始のご挨拶に忙しい大人たちの傍ら、凧や独楽、羽子板持った和子たちが、ワッとお元気に駆け抜けるのが、どこでだって見受けられた風景だったのだけれども。
これも少子化の影響か、いやいや環境も大きに関係してのこと。そんな遊びにというお出掛けの適うような、公園や広場もなけりゃあ、車優先の危ない町ばかりが増えており。都心のお子様は、便利は便利なんだろけれど、何かを感じる力は随分と早くから削がれてしまうばかりで、そういう点だけ見るならば、何とも気の毒な環境にあるのかも。片田舎の和子たちにしたところで、同じコト。フィールドとなるご近所の遊び場には、申し分のない環境が整っているのだが、いかんせん、同い年の子供らが激減しているものだから。やはりやはり、懐かしい遊びはどんどんと廃れていってもいるそうで。
『まま、この辺りじゃあ
まだまだそんなことも
ないようだが。』
川風に煽られてどこまでも、高々と青空を駆け上がる凧には相変わらずに人気があるし、追い羽根突きは、バドミントンなみの速さでの応酬がスリリングでと、お元気なお嬢さんたちの間でいまだに楽しまれているようだし、
「くいな姉とナミとが、
いっつも
ワンツーチャンプなんだよな。」
「そうそう。
男子がとうとう
挑戦しなくなったもんね。
あんなの女の遊びとか言って。」
独楽回しにしてみても、ベイ何とかなんてなハイカラな名前に変わりつつ、やっぱり人気は絶えない模様。しかもしかも、意外なお人が仲間うちでは名人と呼ばれており、
「だーっ、やっぱ勝てね。」
「何でだろな、
そんな変わったパーツ
つけてねぇのによ。」
円盤の中や芯棒に当たる部位やら、何十ほどもの様々なパーツがあって。それを組み替えて回転や重さを変えてゆく“改造”もまた、今時の独楽、ベイ何とかの醍醐味なのだが。特に高価なものや特別なものを、取り寄せてもらってる訳でもないというのに、
「へっへー、こゆのは勘だ勘♪」
絶妙な繰り出しようが功を奏すのか、ルフィ坊やの独楽に勝てるお友達は一人もいない。時々、年上のお兄さんなども相手をしてくれるのだが、やっぱり負けることはなく、
「今度 川向こうの大町で、
ゲーム番組の大会が
あるんだってよ。」
「ルフィも出なよ、それ。」
「う〜、でもなぁ。」
宝物入れの小箱へと、愛機とパーツを片付けながら、まんざらでもないというお返事をしつつも、お顔は何だか渋りがち。
「ししょーが
許可出してくれねぇし。」
「ししょー?」
あ、師匠か。誰だ、それ。初耳な存在に、お友達が小首を傾げるものの。それだけは内緒だということか、ややわざとらしくも強引に、上下の唇、気張って合わせ閉じてしまう坊やには、それ以上は訊いても無駄だとは、皆も承知。
「まあ、いいけどよ。」
「でもな、
もしそゆのへ出るんなら、
教えてくれな。」
みんなで応援に行くからさ。おお、そんときは よろしくなっ。気安く応じて冷たくなった風の中、自宅へ向けて駆け戻る子供らで。多少は長くなった夕方ではあるが、それでもこの寒さの中への長居はきつい。ゆるやかな坂を駆け上がりつつ、どこからか届いた揚げ物の匂いへ、小さな坊やはわくわくと口許をほころばす。
今日のご飯は何だろう。
コロッケとかグラタンだと良いな。でもでも、まだお正月のご飯かもしんないな。マキノの作るご飯はどれも美味しいけれど、シャンクスが我儘言って、大人のご飯にされちゃうのが詰まんねぇ。そんなこんなをごしゃごしゃと考えてたおチビさんが、あとちょっとで自分チの門柱が見える寸前にて、
パタリと足を止め、立ち止まる。
一応は綿の入ったスカジャンっていうのを羽織ってるけれど、マフラーもなけりゃあ、手套も…さっき遊んでた広場に忘れた。そんな微妙ないで立ちの坊や、ぴゅうっと吹きつけた北風へも、瞬きしないで見やったものへ、
「……vv」
ついのこととて にんまり笑った。さてそれから…………どのくらい経ったやら。