■月夜に躍る

□真夜中のテレフォン
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もうすぐ日付が変わるってのに、
月はまだ出てない。
暦で見ると今週はずっと
真夜中に昇るんだそうで。
まあ、今時は
月明かりもさほど重宝されてねぇから、
あんまり関係ないけどな。
だってほら、
ここんトコ随分と春めいて来たから
町にも観光客が多くってサ。
港に着く客船だって
増便されてるし、
遅くまでやってる店とかも増えて、
ネオンとかが眩しいくらいだし。
港町のムーディな夜景ってのは、
山の手のホテルの
ラウンジから見下ろすと
そりゃあ綺麗だからって、
規制がかかるどころか、
あんまり露骨な風俗系統じゃないなら、
むしろ一晩中でも
点けててくれって要請があるほどな
シーズンに突入しつつある。

“……………。”

そうなんだ、
町は華やいで来たってのに。
みんな生き生きしてるってのに。
俺は朝からすこぶる詰まんなくって。
サンジは店が忙しいからって
まだ帰って来てないしさ。
俺だけ することもないからって
不貞寝したのに、
こんな半端な時間に
目が覚めちまうしサ。
月はないのに妙に明るい
町の夜空を窓の向こうに眺めては、
は〜ぁあと、
やるせない溜息なんか
ついてみてたりすんだもんな。

 ――― pi pi pi pi …。

お。携帯が鳴った♪
こんな時間帯に
掛けて来る奴って言えば、
親しいダチに決まってて。
でも、俺ってば
“朝型人間”だってコトも
結構知れ渡ってるのにな。
なのに掛けて来ただなんて、
一体 誰だろう。

【ルフィ?
 もうネンネしていたの?】

「…うううん、起きてたぞ。」

【そうなの。
 …ねぇ、まだ怒っているのかしら?】

「どうだかな。」

【怒ってないんだったら、
 そんなお声、
 出したりしない筈よん?】

「そっちこそ。
 そんな風に訊くってことは、
 罪悪感があるんじゃねぇの?」

【罪悪感って何よう、それ。】

「疚しいとか後ろめたいって
 気持ちのことだよ。」

【あなたに言葉を教えてもらう日が
 来るだなんて、
 思ってもみなかったわねん。
 どうにもお偉くなられたこと。】

「どうもありがとーvv」

【………ねぇ。もしかして、
 昨日話してた
 “変換器”使ってなぁい?】

「うん。
 つけっ放しになってたみたいだ。」

【外してよ。お・ね・が・い♪】

「え〜〜〜、いいじゃんか。
 誤変換はされてないみたいだし。」

【その“誤変換”を
 確認する機能のせいで、
 あたしの声が
 こっちにも筒抜けなのよんvv】

「いい声じゃんvv」

【い〜いから、外してよう。】

「はいはいvv」

変換器と言っても、
別に何か仰々しい機械を
取り付けてる訳じゃあない。
そういう名前のソフトを
携帯のメモリーに
読み込ませてあるだけの話で、
スイッチの切り替えで
すぐにも解除出来て、

「外した。」
【……………ったく。
 何てもんを考えやがんだっ、
 お前はよっ!】

あ、怒ってる怒ってるvv

「面白いじゃんかvv」
【面白くねぇっ!】

そりゃな〜。
天下の怪盗“大剣豪”が
おネエ言葉で話してちゃあ
形無しだもんな。(笑)
ほら、車のナビとかでサ、
合成音声を関西弁とか
名古屋弁に変換出来るってのが
あるじゃんか。
あれと自動翻訳ソフトを応用して、
リアルタイムでの会話を
即座に別の“性格”に
変換しちゃうってソフト、
実用レベルのを作っちゃったんだな。

 *差し支えがなかったら、
  上の【】の台詞は
  中井和哉さんの声で
  想像してみて下さい。
  差し支え、
  大有りでしょうか?(爆笑)


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