■puppy's tail 2

□あのね? 大好きvv
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今年の夏は、何ちゅーか
アチアチだったねぇ?
何にもないのに
どっからかユゲユゲが出てて、
お外に出るとお顔とかお顔とかに
あちゅいのがパフンて当たるの。
何にも見えないけど
何かがくっついてきて、
イヤイヤって、
どいてよぉって、
バイバイってするけど、
あっち行ってくれなくて、
なんか不思議〜。
こんな暑っついの、
カイには
初めての けーけんだったです。
“お盆”てゆー日なんて、
もうもう道が熱っつくて、
あゆくと
あんよがイタイタになって。
これまで生きて来た中で、
いっちばん
暑っつかったってゆったらば。
ママが
“それはたいへんだ〜っ”
ってゆって、
お庭にプール作って、って、
パパのお膝に乗っかって、
ゆさゆさして おねだりしてたです。
………ママったら、お色気作戦?


 「…どこで覚えた、
  そんな言い回し。」






     ◇



いやホントに暑い夏でございます。
わんこをお飼いの皆様は、
小さなお子様への注意と同じほど、
地面に近いところを歩くわんこへの、
様々な気遣いを
求められた夏でもありました。
アスファルトが
火傷しそうなほど熱いとか、
わんこには発汗機能がないので、
水を小まめに与えの、
水浴びをさせのと、
人間が気をつけてあげなきゃ
いけないとか。

「それでなくとも、
 毛皮を常時
 着ている訳だもんな。」

「そうよねぇ。」

まま、
夏には夏毛に生え変わるので、
何も
防寒着としての代名詞に当たる、
シルバーフォックスや
ミンクのそれみたいな
“毛皮”ほど
たいそうなものでは
なくなるのだけれど。

「涼しくなる夜や
 突然の雨の中でも
 身体に響かないようにっていう、
 最低限のそれではあるけれど。」

学生さんの夏の制服…
といったところの装備かしらと、
ロビンお姉様が
即妙な言い方をして下さる。
よって、
途轍もなく暑苦しいと
いうことはないけれど、
タンクトップにジョギパンなんてな
究極の軽装を覚えてしまうと、
制服の長ズボンとか
箱ひだスカートは
やっぱり着たくなくなるのが
人情というもの。

「人情…というのとは
 違うのじゃあ?」

「あれ? 引用間違い?」

大きな瞳をうるりと瞬かせ、
小さな奥方が小首を傾げたのへ、
先日からのご近所さんである、
作家のお姉様がくすすと笑って、

「わんこは“暑いです”と
 自己主張出来ないから、
 人間が察して
 気をつけてあげましょうって
 話だったはずだけれど。」

でしたよねぇ。(苦笑)
そこへ“人情”を持って来て
どうしますか。
とはいえ、
タンクトップどころか
肩ひももない腹巻きみたいな
チューブトップに短パンという、
涼しげの極みな恰好が、
もはや定番スタイルとなっている
奥方にしてみれば、
絹糸のようなふわふわな毛並みや、
黒々としたつぶらな瞳が愛らしい、
シェルティの姿にわざわざなるのは
…ちょぉっと憚られるらしく。

 「でも。
  意志の疎通が
  出来れば出来たで、
  それへもそれなりの
  問題はあるみたいだけれど。」

ロビンがちらと見やったは、
芝生の緑が青々と広がる
窓辺の濡れ縁へ腰掛けている
二人ほどへ。
これもテレビの影響か、
きっと
意味も分からぬままのことだろうに
ちょっとおませさんな
言いようをすることがある
海(カイ)くんへ、
お父さんが
“ちょっと待て待て”と
ツッコミを入れる…というやり取りが、
ここ最近の時々
見受けられるロロノアさんチですが、

 「お年頃の子供を持つ親の
  複雑さというやつね。」

 「何それ?」

 「大人になってくれるのが
  嬉しいような。
  でもでも、
  あんまり駆け足で大きくなるのは
  巣立ちが間近いようで、
  寂しいような辛いような。」

 「…そんな情緒のあることなんざ
  語ってねぇっての。」



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