■puppy's tail 3

□メンメのメ
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 〜〜〜〜〜〜。
 ぷうぷうぷう。
 今日は おねさんとも
 お話しませんの。
 カイ、プンプンですもの。
 だって、
 カイはいい子なのに。
 なのにネ、
 パパが メンメてゆったです。
 もう、ぷぅ〜〜〜んん、だ。



    ◇◇◇



判りにくいです、
坊ちゃん…という
始まりようですいません。
いつもご機嫌さんな坊やですのに、
この暑さのせいでしょか、
ちょいと何かが
斜めに曲がっちゃってる
ようでございまし。
ソファーへ上がり込んで、
小さな体を鞠のように
真ん丸に丸めている
おちびさんなのへ、

 「まあ、
  暑いのは誰しも
  同じなのですし。」

それを理由にしても
良いことと悪いことがあると、
ツタさんが
ちょっぴり困ったような
笑い方になったのもまた道理。
それへと大きく頷くと、
むうむうと
お口を曲げてしまっている
ロロノアさんチの王子様へ、

 「そだぞ、カイ。」

ルフィママが
傍まで寄ってのお声を掛ける。
曰く、
母ちゃんだってな、
凄げぇ暑いけど そんでも、

 「大人は軽々しく
  裸になっちゃあいかんから、
  どんな暑くても
  上も着てなきゃ
  いかんのだ。」

 「………奥様、
  我慢自慢して
  どうしますか。」

ツタさんが
ついついツッコんだのは、
むんと胸を張ったその姿が、
女の子用のチューブトップに
ジョギパンという、
威張った割に
裸同然だったことも
あってかも知れぬ。(笑)
第一、

 「カイ、
  裸んぼさんで
  メェゆわれたのと
  ちやうもの。」

むむうと
ますます口許を尖らせる
王子様。
そう、
今朝方の坊やが
ついつい発揮した腕白ぶりが、
日頃は何をやらかしても、
甘いこと この上ないパパの
滅多に働かぬ
お怒りセンサーへと
触れたらしくって。

 『カイ、
  ちょっと来なさい。』

ぱたたた…と
お元気に駆けてったのを
呼び戻されの、
大きなお手々でやや強引に、
向かい合うようにと
座らされのして。

 『ツタさんとママに
  ドンしただろうが。』

 『ふや…。』

 『後ろ向いてるところへ
  ぶつかったら危ないよな?』

 『うっと…。』

 『何もしてないのに
  ペチッてされたら、
  それもいきなりだったら、
  カイだって
  びっくりするだろうが。』

 『ふみ……。』

もちょっと細かく言うならば。
ぶつかられた側が
もしも何か抱えていたらば、
それが
ぶつかったカイくんへも
降りかかっていたかも知れぬ。
取り込んだばかりの
洗濯物くらいなら、
わあびっくりした……で
済むのだろうが、

 『煮えたぎった
  お湯だったらどうするか。』

そうと続いたお説教へ、
言い合わせたようなほぼ同時、
“それは
 有り得ない有り得ない”と、
顔の前で手を煽って
パパさんへとツッコんだ、
ツタさんと
ルフィママだったのは
言うまでもなくて。
そうですよね、
どんな一般家庭で
そんな危ないもの抱えて
リビングを
横断しますかい。(う〜ん)
ただまあ、
カイくんもそろそろ
赤ちゃんとは言えないお年ごろ。
ドンッとぶつかったなら
“ごめんなさい”と
言えるお行儀を
身につけさせるのに
丁度いい頃合いでもあって。
これは見逃せぬとしたらしい、
実は実直誠実な
ゾロパパだったの
だけれども。

 『う〜〜。』

ご機嫌さんだったのを、
いきなりお説教に運ばれて、
“何が どうした”が
今一つ
繋がっていなかったようであり。
突然パパが怒り出したのへ、
まるで対抗するかのように、
真ん丸な頬っぺを
ぷくりんと膨らませるばかりに
なっちゃったようであり。

 「カーイ、
  パパに“ごめんね”は?」

 「ちらない。」

間の悪いことには、
そんなお説教の最中に
お仕事先からの電話が入った。
待ってなさいと言われたのに、
ぷいっと膨れたまま
勢いつけて立ち上がった
王子様、
お庭へ逃げてっての
それっきり。

 「ゾロも
  書斎に入っちゃった
  からねぇ。」

 「ですねぇ。」

何でも、
盆休み明けに、
例のアスレチッククラブへ、
次世代五輪候補の
若手アスリートが何人か、
トレーニングに来るとかで。
施設を使うというだけなら
どこでも同じ。
有名なコーチに
付いてほしいとの
ご所望である以上、
練習メニューを
練らねばならなくなった
らしいのだが、

 「……………ふみ。」

とてとて駆けてって
ギュウすれば、
ママでも
“おっ、やるか?”って
遊び相手になってくれるけど。
ギュウしたまんま
頬っぺスリスリしたらば、
ツタさんだと
“あらあら
 おネムですか?”って
判ってくれるけど。
ママとの
鬼ごっこ&くすぐり攻撃も、
ツタさんの
“ねんねんよいこ”も
大好きだけれど。

  でもでも、あのね?

お膝に飛び乗ったそのまま、
かたかたのお腹
蹴り蹴りしても
“あっはっはっ”て
笑うパパの方が。
そのままひょーいって、
カイのこと
頭の上まで
片手で楽勝で
抱え上げちゃって、
手でも足でも頭へ届いたら、
パパの分のおやつの
半分やるぞごっことか。
今日は出来ないのかなぁって
思うとネ、

 「〜〜〜〜〜〜にゅい。」

そりはやっぱり
寂しいなぁって、
思ってしまうカイくんらしく。
そはーの上も
一人じゃ広すぎ、
パパの
大きいお手々が恋しい。
小さいお電話の
む〜〜んんってゆう音が
遠くからして、
でもって、
パパが何かゆってるのが
聞こえて。
そいからそいから、
お二階のお部屋のドアが
ガチャッて
開く音がしたから、あのね?
玄関の傍の階段のトコまでを
たかたかたかって
駆けてってね?

 「……じゃあ、
  20日からは
  毎日出勤になるんだね。」

 「そういう事だな。」

ママとお話ししてるパパを、
そおって覗いて、
それから…あのね?


  あのねあのね?
  パパ、あのね?
  カイね、あのね……?





    〜Fine〜  12.08.03.





カイくんを真剣に叱る
ゾロパパという
キリ番リクエストでしたが、
すいません、
叱るところが
あんまり書けてません。
相変わらず子煩悩パパです、
そんなネタで
いきなり叱ってもと、
ルフィにまで
呆れられてますが。
そういうもんです、
不器用ですから。
間の悪い電話のせいで、
資料整理に取り掛かりつつも、
実はパパもまた、
胃が痛かったりしたんですぜ。
どこの筋肉バカだ、
この野郎くらい思って
コーチングに
取り組んだかも知れずで、
カイくんの方から
“めんね?”と
歩み寄ってくれたこと、
感謝しなければなりません。
(そんなオーバーな・笑)



 

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