■puppy's tail 3

□あちあちの夏
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  あちゅい…………。





    ◇◇◇


一体 何遍
使ってるんだという、
夏にはお馴染みな
始まりようで
すいません。(苦笑)
それにつけましても、
この夏もお暑うございますね。
昨年はそれでも、
エアコンの
室外機からの熱風が
控えられたか、
ヒートアイランド現象とか、
多少はマシだったらしいと
聞いておりましたが。
今年は
問答無用という勢いでの
猛暑への突入で、
熱中症でばたばたと
倒れる人も続出とか。
それを聞いちゃうと、
体のためには
エアコンも
使った方がいいのかもと
ついついリモコンへ
手が伸びてしまうと
いうもので。
ウェスティくんの姿だと、
汗をかけないので
暑さも増すものか、
寝ている間に
わんこに戻ってしまう
おちびさん、
愛らしい舌を
ちょろりと出しての
お目覚めを迎えると、
誰に言われずとも、まずはと
メタモルフォゼするのが
日課となりつつあるようで。

 「  う〜っと。」
 「あ・これ、カイくん。」

わんこの姿からの
変化(へんげ)は、
イコール
裸んぼさんでの
おはようさんでもあったりし。
朝から暑い日なんぞは、
早い頃合いから
目が覚めたのを幸い、
こっそりと
お部屋から出て来る
坊やなのを
これまた見越してのこと、

 「待ちな。」
 「やぁも〜んvv」

恐らくは
“ヤダも〜んvv”と
言いつつ逃げ回る坊やなのを、
ルフィママが
パンツとTシャツを手に
追い回すという、
何ともにぎやかな
鬼ごっこから始まる
ロロノアさんチの朝
だったりする今日この頃。

 「ほら、捕まえた。」
 「きゃうっvv」

わんこになった方が
あんよは早いが、
そうなるとたちまち
アチアチになる。
毛並みのせいもあるし、
わんこは汗をかけない体で、
熱を発散させる仕組みが
人の体ほど
発達してないからだとか。
でもね、
坊やのカイくんだと、
ママどころか
ツタさんにも
やすやす捕まってしまうので、
う〜むむと
お口をひん曲げてしまう
考えどころだったりし。

 「あらあら、
  今朝はまた
  お早く捕まりましたねぇ。」

 「へっへぇ〜vv」

子供用のパンツと
風通しのいい
サッカー地のTシャツという、
お子様ならではな
涼しいいで立ちを着せられて、
そちらさんは
一応は大人のはずなのに、
さほど代わり映えのしない、
タンクトップに短パンという
なかなかせくしぃな
恰好のルフィママが、
小さな王子を抱えて
向かった先では。
ツタさんが
朝ご飯を用意してお待ちかね。
冷たいヴィシソワスープと
黄桃とバナナの
ミックスジュース、
炒り玉子のと、
レタスとハムの
サンドイッチに、
ホイップクリームを添えた
薄焼きパンケーキ。
トマトとキュウリの
サラダは自家製で、
今年のトマトは
甘いのがよく出来ており、
カイくんもおやつ代わりに
パクパク食べておいでの
大好きな逸品。

 「あー、ぶどーvv」
 「ホントだ。
  大きいの、
  もう出てるんだ。」

デラウェアは
割と早くから見かけるが、
巨峰みたいな大きさの、
緑色のは今年初。

 「今朝方、
  スーパーの朝市で
  見つけたんですよ。」

 「朝市っ!」

これも一種の
“サマータイム”の導入か、
九時十時どころじゃあない、
八時前という早い時間から
もうお商売を始めておいでの
スーパーが増えた
ここいらで。

 お客の
 取り合いでしょうかねぇ。

 買い物難民とかいう、
 近所にお店がなくなって
 お年寄りとか困ってる
 地域もあるって
 聞くのにねぇと

大人らしい会話を紡いでいる
お二人じゃああったが、

 「あ、こらこらカイくん、
  ハムだけ食べちゃあ
  ダメでしょが。」

 「あらまあ、
  ソーセージとか
  炒めれば良かったですかね。」

あむあむあむと
小さなお手々で掴み取った
ハムを堪能している王子様へ。
朝から食欲があるのは
いいことだと、
お行儀は
二の次になってしまうのも、
このお家ならではの
順番なのかも?

 「何たってパパが甘いしvv」
 「……奥様。」

だってゾロってば
カイが何やっても
褒めるんだもの。
叱られるからって
嫌われる役回りは、
いっつも
俺とツタさんじゃんかと。
ぷんぷくぷーと
頬を膨らませる
判りやすい奥方なのへ、

 “そういう奥様へだって
  大甘な旦那様ですのにね。”

暑いから寝苦しいと
駄々をこねれば、
夜風にあたろうと
お散歩に連れ出してくれる。
暑いけど、
だからって
触ってくれないのは
ヤダなんて、
ご亭主のお膝へ跨ったまま、
そりゃあ甘いお言いようを
なさるのへ。
耳まで赤くなりつつも、

 『…こぉら。』

奥方の丸ぁるい頭を
大きい手で引き寄せて、
おでこ同士を
くっつけてみたりもする。
照れ屋でシャイなご亭主が、
ツタさんも通りすがりかねない
時間帯や場所での甘えへ、
それでもちゃんと
睦みの応対をしているのって、
途轍もない大胆な
冒険にも等しい行為なのに
違いなく。

 “忍耐をやしなって
  おいでなのかしらね。”

くすすと微笑う、
余裕のツタさん。
今朝はまだ
おやすみの旦那様にも、
そろそろ
朝ご飯の支度をせねばと、
ふっくら身の厚い鮭と
きゅうりの浅漬け、
エノキと豆腐のおみそ汁の
仕上げをしに
キッチンへ立ってってゆき。

  「……………あ、
   ゾロおはよvv」

入れ替わりに寝室から出て来た、
大あくびつきのご亭主へ、
にゃは〜vvと
笑って飛びついた
大小でそっくりな
愛らしい家族のお二人。

 まだまだこれからが
 本番の夏ですが、
 どうかお元気で
 お過ごしくださいませね?


 暑中お見舞い申し上げます。




    〜Fine〜  12.07.31.





いやもう、
あまりの暑さに
ワープロの前に座るのも
侭なりませんで。
学校の宿題とか、
ほにゃららゼミの
ドリルとか、
毎日 何十分かずつ
机の前に座らにゃならない
お子様たちも
大変だろうなぁ。




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