■puppy's tail 3

□風より速く♪
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 おねさん おねさん、
 こんにちはvv
 ごーでんイークが
 はじゅまいましたねvv
 テービで
 ゆーえんちのお話とか、
 ネジュミーのお友達の
 大っきいクマさんが
 “は〜いvv”って
 してゆトコとか見たし、
 こあいこあい
 ほーたい巻き巻きの
 お化けがいるトコの
 お話も見たおvv
 今年はパパも
 あんまし おしもと
 行かないそーなので、
 いっぱいぱい
 遊しょべるぞーって
 ゆわれたけど。
 ごーでんイークて、
 遊しょべない日
 だったかなぁ? あれれぇ?



    ◇◇◇


お商売をしておいでの
自営業のお宅だと、
業種によっては
休みの日ほど稼ぎどきなんで。
連休がそのまま
“バカンスだ、遊びに行こうvv”
とはならずの、
ちょっぴり
詰まらない想いをする子も
少なからずおいでだろう。
こちらのお宅の
うら若きお父様も、
隣り町のスポーツジムに、
不定期勤務をしている身。
本人は主に
武道を修めた人物なのだが、
それでも基本は
他のジャンルにも
通じるもんで。
結果、
その世界では
知らぬ人はないという
鬼のトレーニングコーチとして
勇名を馳せておいでなため。
長期休暇には、
だからこそ
集中して鍛えたいという
短期特別メニューを
予約して来るアスリートの方が
引きも切らずという
“引っ張りだこ”状態に
なるのだが。
今年のこのGWは
珍しくも
予約者がないのだとか。

 『ゾロも
  そろそろ人気薄かな?』

 『何だよ、
  そんな嬉しそうに。』

  今時の子には
  厳しすぎて
  敬遠されたんじゃないか?

  いやいや、
  今年は
  オリンピックイヤーだから、
  ○○くんも▽▽さんも、
  この時期は
  調整に入ってるとかで。

  じゃあ、それ以外の人は?

  さてなぁ……。

何ででちょうねぇなんて、
キッチンから駆けて来た
小さな海(カイ)くんを
“ひょ〜いっ”と
抱き上げた動作にて
何とか誤魔化した
屈強精悍なご亭主様だが、

 『予約を入れてた
  学生アスリートと、
  某剣道クラブが
  ありはしたんですがね。』

こそりとツタさんにだけ
話しておいたのが、
学生アスリートさんの方は
春の気候の
乱調に振り回されたか、
風邪でダウンしたそうで。
片やの剣道クラブの方は、
何が原因やら、
合宿中に部員の半分ほどが
腹痛で倒れたのだとか。

 『…何が原因かは
  判っていないのですか?』

 『といいますか…。』

角が立つから
言えないという感じで、
何やら
言葉を濁してらしたので
深くは聞かなかったんですが、

 『賄い担当が
  不慣れな
  女子マネージャーさんたち
  だったそうなんで。』

食中毒というよりも、
辛すぎるものとか、
煮込みが足らずに
後から
胃に来るようなものとか、
そういったものでの
消化不良が
原因らしいんですよと。
どっちにしたって、
そりゃあ あんまり
他言は出来んわなという
事情でのドタキャンで。
怒るとか笑うとかいう
以前の問題、
どういう健康管理をしてたんだと、
呆れられるんじゃなかろかと、
それぞれの監督さんが
冷や汗もので
挨拶に来たんだそうで。
とはいえ、

 『昔の俺だったら、
  何だそりゃ、
  真剣に取り組んでないから
  そういうことに
  なるんだろうがって、
  少なからず
  ムッと来たんで
  しょうけれど。』

結構丸くなったらしい
今の自分へか、
それとも青くて頑なだった
過去の自分へか、
小さく
苦笑をして見せたお顔は、
微妙に
精悍さよりも
朴訥さの方が
勝さっていたので、

 『判りました。
  奥様には内緒ですね。』

日頃から無邪気な奥方は、
そこまでの事情を
聞いたら聞いたで、
それって、
じゃあ喜んでちゃ
いけないことなのかなぁなんて、
彼なりの真面目に、
素直な想いから
考え込んで
しまわれるかもしれない。
そうなるよりかは、
たまには偉そうな自慢顔を
させてやっても
いいんじゃないかと、
そうと割り切ったらしい
ご亭主なのだろと。
こちら様は
そこまでの説明なんかされずとも
余裕で察してしまえる
ツタさんが、
承知しましたと
にっこり微笑ったことで、
大人二人が示し合ったのが
連休前のお話で。

 「ぱーぱ、きぇいきぇいvv」

広いリビング、
ぱたたぱたたと駆け回ってた
小さな王子が、
サイドボードの上へ
新しく置かれた
重たげな
クリスタルのオブジェへ
小さなお手々を
やや不器用そうに差し向けたのへ、
まだまだちいとも
届きはしないが、
そして、だからこそ
そこへ置いたのでもある
小じゃれたデザインの
実はトロフィーに、

 「そうだろう。
  ママが取った
  トロフィーだからな。」

偉かったね、
一等賞だよって
もらえたんだぞと、
正に“我がこと”レベルの
えっへんという
心情滲みまくりなお声で
説明してやる旦那様なのへ、
こっちへはさすがに、

 「…ゾロ、
  それって
  説明の理屈が
  おかしい。////////」

さっきまでは
ちょみっと偉そうだった
奥方が、
鼻白んだように
薄い肩をすぼめてしまったが、

 「そうか?」




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