■puppy's tail 3

□なぜなぜな〜に?V
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 おねさん、こんにちは。
 なんしか しゃいきん、
 暑ちゅかったり
 寒ゃむかったり
 忙しょがしですねぇ。
 わんこになったら
 しょーでもないでしゅが、
 パーカとか着ないとメッて、
 はだしもメンメよって、
 マーマやパパが
 追っかけっこしゅるの。
 しょしたら
 もっともっと
 暑ちゅくなんのにね。
 変〜んなの。



    ◇◇◇


以上、
微妙にもーりんの
ここ最近の実話でした。(苦笑)
冷えるから
着なさい履きなさいと
追っかけてたのに、
気がついたら
ドッと汗かいてちゃあ
意味がない。
そんな微妙さで
暑かったり寒かったりするという、
何とも ややこしいお日和が
続いてるもんだから、

 「油断していると
  爪先が冷たくなってたり、
  そこから
  お腹こわしちゃったり
  しかねないものね。」

うんうんと
鹿爪らしく頷いて見せる
ルフィではあるが、
そんなことを言ってる
ご当人からして、
シェルティの
るうちゃんの姿での
お散歩から帰るとすぐにも、
半袖シャツに短パンという
今の格好へと早変わりし、
その上で
“暑い暑い”を連呼した挙句に、
ツタさんへと
冷たいオレンジジュースの
おねだりをしていたほどであり。

 「おなか?」
 「そだぞ〜?
  暑ちゅいからって
  お腹出してたり
  冷たいものばっか飲んでると、
  ここんところが
  チクチクってして、
  中から痛い痛いに
  なっちゃうんだぞ?」

大きめのカラーボールを
小さな両手で抱えて
駆け寄って来たカイくんへ、
季節外れの怪談でも語るよに、
怖いんだぞ〜?っと
脅すように言うママなものだから、

 「こあい〜〜vv」

 「あ、ちっとも怖がってないな、
  こいつぅ〜。」

確かにまあ、
満面の笑みで“こあい〜vv”は
ないもんだ。(苦笑)
そんな二人に
くすすと微笑っている
ツタさんはといえば、
きれいな黄色も目映い
柿の実の皮を
くりくり・するると、
そりゃあ器用に剥いておいで。
いかにも美味しそうな
秋の味覚だが、

 「まぁだ ニガニガね。」

美味しそうだと寄っても行かぬ
ルフィやカイくんなのが、
ゾロパパやツタさんには
実は驚きの現象であったりし。

 『甘いのはこっちですよって、
  用意も
  してあったんですけれど。』

 『う〜ん。
  匂いとかで
  判るもんなんだろか。』

そう、今ツタさんが
用意しておいでなのは、
このまま吊るして乾かして
干し柿にする予定の、
ずんと渋い渋い柿だったりし。
だが、そうなんですよという
説明さえしないうちから、
母子揃って
苦手なワサビやカラシが
相手なときと同じような
お顔をして見せ、
遠巻きにしている
ばかりだってのが、

 「さすがは
  野生の感覚だよなぁ。」

 「そぉっかな、
  そんな不思議なことでも
  ないだろと思うけど。」

今日はジムもお休みのパパさん、
暑い暑いと騒いでいる間は
そばに寄らぬ方が善かれと
離れていたが、
そんな向こうから
チョコチョコッと寄って来ての、
こっちの二の腕へ
ぺとりとくっついて来た
奥方だったので、
そんな風に話を振れば、

 「柿自体の匂いも違うけど、
  それより何より、
  ツタさんが
  “ごめんなさいね”って
  お顔になってたし。
  カイが近寄りかかると
  ゾロも“あっあっ”て
  気配になってたし。」

 「…そういうのも
  いい勘してるからこそだろうよ。」

やっぱり鋭いもんだと、
ますますのこと感心し、
きゃ〜いっと駆けて来た
小さな王子をぱふりと受け止める。
皮向きの手をとめたツタさんが、
こちらは甘いのをと
用意しておいでだったお皿を
運んで来たのへ
ついて来たようで。

 「うん、甘〜いvv」

ちょっと
柔らかくなりかけてる時のが、
一番好きだな俺…と、
スリムなフォークに刺した
甘い柿を
うっとりぱくつくお母様へ、

 「ねー、なーんで
  ニガニガのもあんの?」

 「んん??」

なんでなんでと
小首を傾げる坊やなのへ、

 「うん、
  干したら美味いって
  判ったからなんだなvv」

 「……ルフィ。
  何か変だぞ、その理屈。」

だって そうなんじゃん、
どうやっても美味しくないなら
駆逐されてるって、と。
結構難しい言い回しもした上で、

 「何てったっけ? 
  インカ論?」

強いとか美味しいとか、
競争に勝った方が
生き残って
自分の仲間を増やすアレ。

ああ、
そりゃあ“進化論”って…
いうんだがと
応じかけたゾロパパが、
あれれぇ?と
微妙に眉を寄せてしまう。

 「…何でそんな
  難しいこと知ってるんだ?」

 「んっと、
  昔にミホークのおっちゃんに
  教わった。」

象の鼻が長いのも
キリンの首が長いのも
そういう理屈だって。

 「だからな、
  俺らが数減っても
  生き延びてるのはサ、
  生命力が強いからか、
  世の中から
  必要とされてるからか
  なんだぞって。」

そんなゆってたもんと、
嬉しそうににっぱーっと
笑われてしまっては、

 “……親父。”

要らんところで
点数稼いでんじゃねぇと、
息子さんが歯軋りしておりますが
…まあそれは いっか。(こらー)

 「…まあ、
  進化論が出て来る話か
  どうかはともかく。」

んんんっと
あらたまったように
咳払いをしたお父さん。
お膝によじ登って来た小さな坊やの、
ママに激似の
愛らしいお顔へ
ちょっとばかり蕩けつつ、

 「苦いのも
  生き残ってるのはあれだ。
  人間の味覚だけが
  左右するもんじゃあ
  ないからだと思うぞ?」

そこは正しておかねばと思ったか、
一応の説明を繰り出しておいで。

 「?? そうなのか?」
 「しょーなの?」

ドングリ目や
ふやふかな頬のそっくりな、
そりゃあ可愛い子二人から
見上げられたのへ、
うんうんうんと
多いめに頷いたお父さん、

 「タデ食う虫も
  好き好きって
  言い回しがあるように、
  そりゃあ苦い苦い草だって、
  それが主食だって虫は
  案外といるもんだし。」

そうと説明されたのへ、
ああ…と納得がいったものか、
お顔を上げたルフィママ。

 「そういや、
  罰ゲーム用の
  苦いジュースの素の野菜とか、
  やっぱ苦いんだものね。」

そうそうと、
ツタさんも頷いたところへの後押し、

 「トウガラシなんてのは、
  人間だけじゃない、
  どんな虫でも動物でも
  食えない辛さなんだが、
  実は鳥には大丈夫なんだと。」

 「???
  なんで?なんで?」

カラシ?
そだよ、カレーより
辛い辛いのだよ〜と、
小さな王子へ
怖いものででもあるかのように
説明したお茶目なママさん、
でも、なんで鳥は平気なのか?
というところは
パパに頼っての
“どうして?”というお顔を
向けたれば、

 「鳥の舌には
  味を感じる機能は
  ないらしくてな。」

  甘いも辛いも判らないから、
  そりゃあ辛い
  トウガラシだろうが
  シシトウだろうが
  平気で啄めちまう。

 「…そっか。
  じゃあ、トウガラシは
  鳥しか食べないんだ。」

 「そうして、
  遠くまで運んでもらえるから、
  滅びるどころか
  繁殖しまくりってわけだ。」

じゃあ
渋柿も鳥が食べてくれるから、
大きい実を作るのが
堂々と生き延びて来れたのかなぁ?
来れたのかなあ?…とばかり。
なあなあと、ねえねえと、
かわいいママと坊やに
詰め寄られの擦り寄られ、

 「さあてなぁ?」

にんまり微笑っておいでの
お父様なのへ、
随分緩んでおいでだと、
こそり笑った
ツタさんだったなんてこと、
ええもう、そんな、
放っておいた方が面白いことだもの、
わざわざ暴露したりなんか
するもんですか。(笑)


  物知りお父さん、
  今月は
  お誕生日もあることですし、
  どうかそれまでは、
  威厳を保って
  くださいませね。(こらこら)





    〜Fine〜  11.11.07.





何の話だか…な
ネタですいません。
でもね、
アクが強くて渋々の柿が、
なのに生き残れてるのって
不思議だなと思いまして。

でも、その柿シブは、
例えば耐水性が出るからと
和傘や特殊な和紙の加工にも
使われて来ましたし。
干してみたらばあら不思議、
タンニンが抜けて、
それはそれは甘い、
絶品の果実になるそうで。
上手いこと出来てはる。



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