■puppy's tail 3

□まだ土用どころじゃないのにね
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 あちゅい…………



    ◇◇◇



以上、とろけそうになってる
海(カイ)くんでした。


  ……じゃあなくて。


暑中お見舞いは
“土用”の日が
過ぎてからだそうですが、
そんなどころじゃあない、
六月末辺りから
既に猛暑日が
連日続いている今年は、
だっていうのに
“節電”の夏でもあるから
堪りませんで。
箱根のお山は、
地上に比べれば
多少ほど涼しいそうだけれど、
それでも、
雲の上というほど
遥か彼方へ遠いワケでなし。
朝晩の涼しさは
確かに格別かもだけれど、
お昼間の陽の射しようは同じだし、
陽向の目映さはそのまま、
気温の高さにもつながって。
電力消費量が最も多いと言われる、
午後2時から
4時にかけての時間帯は、
この辺りにだって
結構な暑さが訪れてのこと、
町はしんとした沈黙に包まれる。

  そうはいっても

さすがに、
天然の緑が間近に多いのは
ありがたく。
色合いも堅さも擦り切れたほどに
古いアスファルト、
そのまますぐにも
土になる道を選んで分け入れば、
まだまだ若い
スズカケや椎の木といった
瑞々しい木立ちのどこかから、
さやさやさらさらという
せせらぎの音をBGMに、
冴えて軽やかな小鳥たちの囁きが、
緑の苑から
聞こえて来るのではあるけれど。

 「木陰は建物の日陰より
  ずんと涼しいと
  昔から言いますしね。」

 「そういやそうですよね。」

早く明けたとはいえ、
結構まともに降った
梅雨のこれも余韻か、
まだ蝉の声は聞かれないのに、
昼が近づく頃合いともなれば、
じりじり炙られるような陽が
容赦なく照って来るこの七月で。
涼しいからって
あんまり遠くまでお散歩に行くと、
帰るのが大変だと。
早速にも散歩帰りに
朝一番の行水をして来た奥方が、
タンクトップの胸元へ
手扇で風を入れつつ
舌を出して見せたので、
クラッシュアイスにそそがれた
琥珀色が何とも綺羅らかな、
甘いめのアイスティーを
出してくださったツタさんが、
出来るだけ木陰を選んで
帰っていらっしゃいと、
教えていたところ。
それへと、
ゾロパパも自分の感慨を
付け足しておれば、

 「あれって、
  木の出す酸素とかの
  影響もあったんでしょうね。」

 「うや?
  しゃんしょ?」

こちらさんはまだまだ
ネムネムだと、
ふくふくした小さなお手々で
お顔中をこしこしと擦ってた王子様。
パパのお話を耳にし、
ふわふかな頬に
埋もれかけのお口を
ぽっかり開けており。
うあ、何て可愛いかなと
目許を細めたお父さん、
ソファーに腰掛けたそのまま、
懐ろへ抱えていたカイくんへ、
顎を引いてのお顔を向け直すと、

 「そうなんだ。
  木や草もな、
  カイやパパみたいに
  息を吸って吐いてっていうのを
  していて。
  人と違うのは、
  木は酸素っていうのを
  作ってくれているから。
  その“呼吸”って
  いうののおかげで
  空気が綺麗で涼しいんだ。」

 「……う? う〜っと?」

確かにその通りではあるけれど、
そこまで細かい理屈までは、
小さなカイくんには
なかなか飲み込めまいにねと。
シャワーで濡らした
前髪の生え際辺り、
拭い損ねた細い髪を
張り付かせて…という、
いかにも幼いお顔のまんま。
それでもそんな機微を飲んでのこと、
ご当人たちの頭越し、
ツタさんと苦笑を交わし合う
ルフィママだったりし。


  ほ〜ら、
  カイも寝汗でべとべとだろう。
  パパとお風呂入っといで。

  うっ、
  カイ、おふよ入るっvv

  よっし、風呂だ風呂。


まだまだ小さくって、
とはいえ あまりに暑いお昼間は、
抱っこされるのやーよと
逃げ回る坊やなので。
朝のうちに目一杯
スキンシップ取っとこうねの
構えとなる、
猛暑日のロロノアさんチ
だったのでありました。







 ■ おまけ ■


体格と腕力とそれから、
そこは大人で
人を構う余裕も有りということで、
頭から爪先まで
きちんと洗ってやる、
意外とまめまめしいところが
買われてのこと、
お風呂はママより
パパのほうが頼りになる
ロロノアさんチですが、

 「パーパは
  かちこちで
  ごちゅごちゅなのね。」

 「???」

 「マーマは
  ぽよぽよでふあふあなのね。」

 「?????」

濡れてしまうと
たちまちペッタリ
頭に張りつく髪を、
ツタさんからごしごしと
拭ってもらいつつ、
ご機嫌さんでお喋りするカイくんで。
それが聞こえたものか、
あ〜っと奥方が
頬を膨らませて見せる。
まだちょっと、
手元がおぼつかないと
思われるための、
飲み口へストローを
装着したペットボトルの麦茶を
持って来たそのまま、
カイくんを挟むようにして、
ツタさんと逆のお隣に
腰掛けたルフィママ、

 「カイくんひど〜い。」

非難囂々という
言いようをするのだが、

 「だぁって
  ふやふやだーもん。」

小さなお手々を
延ばした坊やは、
ママのお胸あたりを
ちょむちょむと
叩いてみせるばかりであり。

 「………あれって
  一体何のお話でしょうか?」

なんだか話が見えませんがと、
小首を傾げたお母さんへは、
バスルームを軽く流してのこと、
後から出て来たゾロパパが、
苦笑をしつつのご説明。

 「ああ……えっと、
  何と言いますか。」

そちらさんも、
ボトムこそ涼しげな
揚柳素材の陣兵衛だったが、
上はタンクトップという
ご自身の胸元を、
立てた親指の指先で
素早く軽くつついて見せてから、

 「ここの堅さの話らしいです。」
 「あらまあ。」

成程、そこは“ママ”でも
男の子なだけに、
パパと比べたら
柔らかいだのふわふわだの
言われると、
ちょっとばかり
“物申す”したくなる
ママであるようで。

 「そりゃあ、
  ゾロのお腹みたいに
  腹筋が割れてたりは
  しないけどさ。」

そいでも力持ちじゃあ
あるんだからなと、
それこそ
“子供のケンカ”のような
言い合いっこになっている、
かあいらしいママさんだった
ようでございます♪





   〜Fine〜

   11.07.11.





ここだけの話、
書きたかったのは
おまけの方です。(笑)
原作様のルフィさんは、
あれでなかなか
腹筋だって割れていて、
確かに
雄々しい頼もしい男の子ですが。
それでも……
ゴム仕様なせいでしょか、
2年経っても、
体バランスとか
顔の部位の配置とか、
かあいらしいまんま
だったそうなので、
ついつい
そこんところを
突っ込んでみたくなりましてvv
いいじゃあないですか、
ギャップが大きい意外性の男♪
いつまでもいつまでも
ゾロにぎゃあぎゃあと我儘言っては
仲よくじゃれついてて
ほしいですvv


 

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