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□虹のかけら
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 頭から信じていたらしいルフィがあんまり可愛らしくて、ビビは寝入る前にその一件をナミに話した。すると、

「ああ、それね。」

 ナミも"くつくつ…"と笑って見せ、
「あたしはそれの前振りになってたところに居合わせたんだけど…。」
 と前置きして説明してくれたのが、何故また"塩を干せば砂糖になる"という話になったかの顛末だった。それによると、太陽光を利用した装備か何かを作っていたウソップが、熱中のあまり、朝食をとりながら後甲板で試作器の組み立てをしていたのだそうで。その時に、ゆで玉子へかける塩を間違えて紅茶に入れてしまったらしい。
「入れるとこから見ていたのが、あたしとルフィでね。止める間もあらばこそって勢いで飲んじゃって、それを"ばっかだなぁ"ってつい笑ってしまったルフィだったものだから、負けん気が強いウソップは"何言ってんだ、ずっとお日様に照らされていたから砂糖になりかけてたぞ"なんて嘘を繰り出したってわけ。」
「…まあ。」
 男連中が眠っている部屋へ聞こえないようにというコソコソした会話だったが、その顛末にはビビも再びクスクスと吹き出してしまって、声を押さえるのに難儀していた。

「ウソップが口にするのは
 悪意のある嘘じゃあないのよね。
 大概が口から出まかせのホラか、
 知ったかぶりを通すための嘘。
 もともと、
 誰かを守ったり
 励ましたりする嘘しか
 つかない奴だからね。」

 誰かを騙して陰でこっそり見ていて笑ってやろうという悪趣味な種のものは極めて少ない。そういう嘘には高等な知恵がいるから…というのは別なお話で展開したのでここではおきますが(『嘘でもいいの』参照って まだUPしてなかったですね)、かつて彼がいた故郷の村での"海賊が来たぞ"というあの嘘だって、平穏な生活に退屈がっている村人へ刺激を与えよう…という彼なりの"余計なお世話的"大義名分があった代物だし、彼自身へまつわるもう一つの"理由(ワケ)"もあった。

「でも。一番真に受けて引っ掛かってるルフィには、ウソップもどっかで面白がっているんじゃないかしら。」

 女の子たち二人が"かわいらしいエピソード"として楽しんだその話に、まさか続きがあろうとは。麦ワラ海賊団随一の知将であるナミにも、そこまでの予測は立てられなかったのだから、その点では初めての白星…いやいや大金星を、ルフィにあげてもいいと思う筆者だったりする。



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