■天上の海・掌中の星 2

□昨夜はハロインだったので
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 *いつぞやの
 “とある真夏のサプライズ♪”の
  後日談みたいなお話なので、
  別のお部屋のキャラが
  当然顔で出て来ます。悪しからず。



キリスト教では、
11月の始まりの日を
“万聖節(All Saint'Day)”といって、
すべての殉教諸聖者を祭る日
とされており。
その宵にあたる、
10月最後の晩が
“ハロウィン(Halloween)”。
万聖節は
“Hallowmas”ともいうので、
その“宵祭り”という意味であり。
聖なる殉教者を
祭ることに則しての
恩赦ということか、
それとも他の亡者にも
幸いを大盤振る舞いしようと
いうことか、
日本風に言やあ
“地獄の釜の蓋が開く”ため。
迷い出て来た亡者らが、
自分の町や家へ居着かぬよう、
もっと恐ろしい魔物に
化けることで、
あの世へ追い返す集いを
夜通しこなす、
何ともにぎやかしい
お祭り騒ぎでもあって。

 今年はそのハロウィン、
 丁度日曜の晩でもあったので、
 宵に馬鹿騒ぎをするのには、
 ある意味 丁度いい巡り。

昼間っから
それぞれに
意匠を凝らした仮装をし、
なりきりパーティーなんてのを、
開いてみるのもまた楽し。
幼い和子らは袋をかつぎ、
無邪気な子鬼に扮して
家々を廻る。
合言葉が決まっていて、

 ― お菓子をくれなきゃ
   悪戯するぞ!

そんな小さな魔物たちが
門口に立ったなら、
“悪さは勘弁”と、
お家の人らが
キャンディやクッキーを
振る舞ってくれるので、
それを受け取り
次へと回るのだが、

  なんか地蔵盆みたいだな、と

意外やルフィが
そんな古い風習を知っており、
おおおと、
天聖界組のお兄さんたちが、
少なからず驚いての
微妙な苦笑を見せる中、

 「…???」
 「ああ、
  地蔵盆というのはだな。」

こちら様も…
風貌だけならキリスト教圏の
存在にしか見えない、
金髪紅眸の色白なお兄さんが
キョトリしたのへ。
連れの黒い髪のお兄さんが、
一から説明してやるのがまた、
微妙な風景だったりし。
カソリックに例えれば…とかいう
説明の仕方ではなかったので、

 「久蔵は
  キリスト教の人じゃねぇのか?」

思ったままを
素直に口にしたルフィだったのへ、

 「…。(頷)」

こっくり頷いた、
今は大人Ver.の大きさでおいでの
大妖狩り様。
ちょっとした縁があって、
別の遠い町で
邪妖の監視をしている彼らと
知り合ったのが夏の終わりごろ。
昼の間は猫の姿に
身をやつしている彼らとも、
器用に
コミュニケーションを
持ち続けている
こちらの坊ちゃんが、
とある柔道の大会へ出るという話を
していたところ、
向こう様の家人がそれを聞いて、
応援に行きますと
言い出して下さり。
それで…という再会が叶った
仔猫と少年だったのだけれど。

 “まさか、
  こういう
  お兄さんたちだってこたぁ、
  知られてないみたいだのにな。”

サンジやゾロも一度だけ、
彼が迷子になった折に、
わざわざ迎えに来た
向こうの家人らとは逢っていて。
特に霊力が高そうでもないながら、
それでも、この久蔵が
ただの仔猫じゃあないって
ことまでは、
理解なさっているらしいかったが。
本性がこんな…
どこぞかの西欧王家の
王子様のような、
玲瓏透徹な風貌の青年だとまでは、
きっと知らないに違いない。
切れ長の目許は きりと冴え、
細い鼻梁に、
淡雪のように霞をおびた白い頬。
淡くけぶる金絲は
少しほどくせっ毛なのか、
軽やかなふくらみを保っての、
華やかな美貌へ
なおの雰囲気を与えており。
無駄なく引き締まった体躯は、
行儀のいい立ち居によって、
ますますと
シャープな印象を醸すばかり。
あまり表情も動かさぬ彼なので、
黙って立っていればそれなりに、
クールな存在感に満ちた美丈夫
…で収まるのだけれど。

 「…だ〜か〜らっ。」

カボチャはお前の家でも、
あの金髪が彫って
ランタンにしとっただろうがと。
何か今更なことでも訊いたのか、
黒髪のお兄さんが
“こやつは〜〜〜”という
お怒りの声を上げたため、

 “…まあ、
  風貌が二枚目だからって
  中身までそうとは
  限らんわなぁ。”

というか、

 「なんだ久蔵、
  お前も
  ハロイン知らなかったのか?」




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