アオちゃん's Novel
□ワタルくん&サキさん〜君といるこの時間はプライスレス〜
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「はぁ〜、そういえば私の成人式、誰にも祝ってもらえませんでしたね〜」
そんな、サキのため息混じりの独り言を聞く度に、オレの背中はビクッとなる。
「(サキのやつ・・うーん・・よーし!!)」
そして、その日の夕飯。
「なあ、サキ。」
「はい?どうしました若?」
「・・明日ディズニーランド行くぞ。」
「え?」
「だから、ディズニーランドだよ、ディズニーランド。」
「でも、明日はお店が・・」
「なんだよ。行きたくないのかよ。」
「・・いえ。楽しみにしてますよ、若♪」
サキはニコッと微笑んでくれた。
サキの成人式。オレは何もしてやれなかった。
だから、サキが楽しめるような何かをしてやりたかった。そこで思いついたのが、ディズニーランドへの日帰り旅行だった。
翌日。
「さあ、ついたぞ。」
「うわ〜、すごいですね〜」
平日とはいえ、さすがはディズニーランド。見渡す限り大勢の人々で賑わっている。
「わたしたちも早く行きましょうよ若〜」
「あ!おい、そんなに急ぐと・・」
ガッ「キャッ!!」
もはやお約束。入口で早速つまづいた。
「おい、大丈夫かサキ!?」
「う・・すいません若。」
「やれやれ。ほら、行くぞ。」
「は、はい!」
いつもの調子で、オレたちは歩き出した。
「さてと、何に乗ろうかな。」
「若、あれ乗りましょうよ♪」
サキの指の先には・・
「スプラッシュマウンテンー!?」
いきなりの絶叫マシーン・・
「・・あー、今日はなんか身長が縮んで・・」
ガシッ!「大丈夫ですよ、若。身長制限はクリアしてますから。」
「(えぇ〜・・・)」
そして・・
「キャー!!」
その後も、ジャンンルクルーズやホーンデットマンションなど、人気アトラクションを楽しんだ。
「ふ〜、楽しいですね、若♪」
「ああ。たまにはこういうのもいいな。」
それにしても・・
今日のサキはいつものメイド服ではなく、二十歳の女の子らしいファッションだ。
だから、二人で歩くと姉と弟みたいで恥ずかしい。
「・・クスッ♪」
「ん?何が可笑しいんだサキ?」
「え?だって、こうして歩くと、私たちって姉と弟に見えませんか?それが何か可笑しくって♪」
「う・・」
お前もオレと同じことを・・さっきからオレをチラチラ見ていたのはそういうことだったのか・・
「って、おい!あまりくっつくな!!恥ずかしいだろ!!」
「ふふふ、かわいい弟ができたみたいで楽しいですね♪」
まったく・・でも、まあ、サキのやつ、楽しそうだから、いいかな。
楽しい時間というのはあっという間で、気がつけば、もう夕方。
夕日が、オレたちを包み込む。
「若。」
「ん?」
「夕日、キレイですね。」
「ああ。」
『お前のほうがキレイだよ。』
姉と弟みたい・・もし、オレたちが恋人同士だったら、オレはそう返したのかな。もし、歳が近くて、別な出会い方をしていたら・・
夕日を背景に見るサキの横顔が、オレにそう思わせた。
「サキ。」
「はい?」
「パレードが始まる前にご飯でも食べるか。」
「はい♪」
こうして、オレたちはレストランで食事をとり、パレードを見た。
パレードには、観客を虜するのに十分な魅力があった。闇の中で光り輝く華麗な光景に、オレもサキも見とれてしまった。
その帰りの出入口。
「若、今日はホントに楽しかったですねー♪」
「ああ。オレも楽しかったぜ。」
「・・若。」
「ん?」
「ありがとうございました♪」
「おう。・・オレのほうこそ、ありがとな。」
「え?」
「な、なんでもねぇよ。それよりも、さっさと帰るぞ。明日は忙しいからな。」
「はい♪」
でも、まあ、今日くらいはゆっくり帰っても、いいかな。サキと二人だけの、この時間の中に、少しでも長くいられるように。
おわり