トリカゴッド
□前
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遠くに流れる山並みを見るともなしに見ていた。
耳元を過ぎていく風が乱暴に髪にじゃれついては頬に叩きつける。両脇では悟空と悟浄がハクを挟んでまた口喧嘩を始めた。巻き込まれる前に、身を乗り出して前の座席に手をかけ八戒と三蔵の間に頭を覗かせたハクに、運転しながら八戒がちらりと視線を寄越す。
「危ないですよ、ハク」
「うん。なぁ八戒、次の町ってどんなとこ?」
「地図によれば結構大きい町みたいですよ。交通の要所になってる町ですから人も物もいっぱいでしょうね」
「そっか」
端的に答えながらも嬉しいのかハクはその大きな目を輝かせる。早くも痺れを切らした三蔵のハリセンが後ろで炸裂し、車上にはここぞとばかりにエンジンの唸る音と風の音が満ちた。
見上げた空に、鳥が一羽飛んでいた。