短話

□グッバイマイワールド
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頭からまっ逆さまに落ちていくその時、視界に金色が揺らめいた。目を見開く。落ちていく私の真下にいたそれは、新体操のように綺麗なフォームで宙に静止している人間だった。
その人が宙で一回転をする。目が、合った。


「えっ…」

「っ!」


さあっと血の気が引いた。
このままでは巻き込んでしまう!自分の自殺に他人まで巻き込む。そんなのはごめんだ!


「避けっ――」


避けて、と言いかけた瞬間、私たちが落ちていく視界の先で固く硬かったはずのコンクリートが割れた。否、そう錯覚させるような光輝くピンクの円が、巨大に幾重にも展開していったのだ。そしてその中心に現れたのは、何もかもを飲み込んでしまいそうな黒い空間。ブラックホールのみたいな、という言葉がぴったりだ。いやでもブラックホールがこんなところにあるなんてそんなはずは。
金髪の彼も異変に気がついたようだった。足下を見、体をこわばらせる。私も顔の筋肉が表情引き攣る。よくわからないがあれは固いものじゃないこと、そしてあの黒いものの中は“ヤバそう”だということは判る。しかし悲しいかな、落ちていく重力と地球の引力に抗う術など、私たちは持ち合わせていないのだ。つまるところ、黒い空間の中に落ちる以外なかった。




「「うわあぁあああああああ!!!?」」















ッバイマイワールド





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