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□朝、体温はゆるやかにとけて
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朝の気温は低い。布団の中に入っていても、寒いものは寒い。
なんだか物足りない布団を引き寄せて、きゅうっと身体を縮める。
「さむ…」
「んー…」
……あれ?
いまなにか、自分以外の第二者の声が聞こえた、ような。
寒さも忘れてバッと起き上がると、私の隣、見覚えのある長身が私のベッドに転がっていて、あまつさえ私の布団にくるまっていた。どうりで寒いと思ったら――。
「ん…あれ、起きたの?」
「起きたの?じゃないよ全く…。
蔵之介、いつのまに家に部屋に入って来たの?」
「いつだったっけな…夜中の2時ぐらい?合鍵使って」
しれっと言う蔵之介からは申し訳なさとか悪気とか、そういうものが感じられない。
怒る気力もなくて、替わりにため息を吐いた。
「ああ、そう…でも蔵之介、来るなら前もって連絡して?これって下手したら不法侵入になるんだし」
「あーわかったわかった、今はとりあえず……それっ!」
起こした上半身は、寝たままの蔵之介が私の手首を掴んで思い切り引っ張ったことでベッドに逆戻りした。否、蔵之介の上に倒れ込んだ。驚いて、か細い声が漏れる。
「お、イー声」
「ちょっとっ」
慌てて起き上がろうとして、けれど掴まれたままの手首がそれを阻んだ。その拍子に蔵之介の胸元に鼻を思い切りぶつけた。蔵之介は平然している。私は痛い!
「たまにはいーじゃん、だらだらするのもさ」
「うー…」
「いい子」
わしゃわしゃともう片方の手で撫でられて、目覚めたばかりだというのに眠気が襲ってきた。
勝手に家に上がられたり布団に入られたり。色々と強引で理不尽な事ばっかりのくせに、それが嫌じゃない自分がいてちょっと悔しい。
「…蔵之介のばーか」
仕返しに一言呟いて、そっと瞼をおろした。
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遅くなって申し訳ありません…。
くくるさん、リクエストありがとうございました!
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