ごちゃごちゃ

□鮮烈モノクローム
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「ねえ」

囁かれた声が遠い。
綺麗色の瞳が薄がりの中でギラギラと絡み付いて放さない。

「知ってる、ユーリ?」

視界に映る彼女が、重力に垂れていた髪を耳にかけた。それだけの動作にベッドは軋む。
ぎしり、他に誰もいない部屋にそれはよく響いた。
電気もつけない暗い部屋、俺を見下し月明かりにさらされた顔が白く映った。普段の、柔らかな笑顔とは掛け離れている。酷く不健康で狂気の混じった、オレの知らない別の人間。


「何をだよ」

不機嫌を隠さずに答えると、それに気付いているのかいないのか彼女はににっこりと笑みを深くする。


「男女間に、友情は成立しないの。異性と出会った瞬間にね、脳が生殖相手として判断するんですって」


「…へえ。そりゃ初耳だ」

「ねえ」

最初と同じ問い掛け。

「ユーリ、大好きよ。だから一生このまま仲良し子良し、なんて嫌なの」

「お前、ちょっと待」

「いつから一緒だったのかなあ。あなたが笑うときも苦しむ時も怒る時も戦う時も、旅をしている時も。ずっと見てて…」

異様な、頬の肉を噛み潰す音が響いた。思わず喉が引き攣り、出掛けた反論が胃に戻っていった。


「でも 今 あなた」

そして、低く低く地獄を這う声音が耳を障る。

「『あの女』が好きって、言った?」

「ッ!」

「私の聞き間違いかなあ?大変だわ?私まだ若いのに?ネェ?困ったなあ!」


大人びた口調と子供じみた口調が織り混ざっている。そのことに、彼女は気付いているのだろうか、無意識なのだろうか。
いずれにせよ、大分、不安定に見えた。唇からは今にも噛み付かんばかりの剥き出しの犬歯が覗いている。
よく見知った相手のはずなのに。たったそれだけが怖いなんて、まるでこれは

「あれ話が逸れちゃった。そうよそうだったわユーリ。愛し合おうよ!!」

彼女の手がゆっくりとオレの首に掛かった。恍惚を具現した表情、これから何が起こるのかを何となく察した。女一人の力なんて簡単に押し退けられる。けれどオレの意識の大半を占めている怠惰がなんとなくそれを後回しにした。



「死ね」



全てが、ただの悪夢のような気がして。






















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