長話

□Prologue
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少女が見ているのは、森だった。

座り込んだ少女の周囲には背の高い木々が立ち並び、日も高いというのに薄暗い影を作っている。
森の中。表現としてはまさにそれだった。
奥に潜んでいるであろう凶暴な魔物は、非力な人間など八つ裂き、ひとのみにしてしまうだろう。
しばらくして、少女は足元に落ちていた、彼女自身の物らしい杖――それを握ってゆっくりと立ち上がり、足元を見た。少女がいるのはクモの巣のようにめり込んだ地面の中心。まるで空から隕石が落ちてきたかのような跡がある。

そうしてきょろきょろと見回すと一点に視線を留めた。背の高い木々が遮る景色の向こう、何かに被さるようにして巨大な光輪が輝いている。
少女は一息を吐いて埃を払うように服を叩くと、光輪が見えた方角へと森の中に消えた。

微かな足跡を残して。



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