長話
□厳冬ショッピング
1ページ/1ページ
ぴゅう。
玄関から一歩外へ踏み出すと、外は凍える気温だった。
冬の風の厳しさは、突き刺される痛みに似ている。あまりに敵意を持った寒さに微かに眉が寄った。寒いというより、ひどく冷たい。
「わー、寒い…」
と言って身を縮める月海。
「すっかり冬ねえ」
空を見上げた千絵子さん。
「これしきの寒さ!呂布のごとく燃え盛る闘志で掻き消してくれるわー!」
きえー!と荒ぶる鷹のポーズを決めたまやや。元気だ。
「早くいこう」
一同を促すばんばさん。
「風邪をひくといけませんから…」
一同を心配するジジ様。
彼女らが好んで出かける理由はただ一つ。週に一度の鍋パーティーの買い出しだ。肉は、またあのお洒落さんが持ってきてくれるらしい。一流の肉だったしその分代金も浮くのだが、いいのだろうか。
「それじゃあ、行きましょ」
「一座、出陣んんんん!!」
まやや、元気だ。
ひゅう、とまた氷のような風が通り過ぎていった。むき出しの首もとからみるみる体温を奪っていく。
酷く寒いなあと思ってから、ああ、マフラーは貸してしまったんだと思い出した。
_