短話

□デッドレース・オーバーラン
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どうしてこんなことになった?

心臓がバクバク言っている。そんな調子でフル稼動してたらあっという間に寿命がきそうだ。いや、その前に今ここで天命尽きる方が早い。間違いない。なんてったって今ワタシが対峙しているのは学園都市最強のレベル5―――泣く子も喚く一方通行様その人。しかも怒っている。怒り狂っている。どうしてか理由は全く不明だが、私に対してだ。

「でよォ、もう一回聞くが――」

自分の足元が凄まじい音を立てて減り込んだ。うわあ!!?

「お前が連れ去ったガキはどこだ?」
「しっ、しらっ、知りないです!すみません存じ上げないです!人違いです!勘違いですヒィッ!!」

今度は後ろの壁から破壊音。
そろりと視線を横に移すと壁に巨大な穴が開いていた。そこから覗く向こうの壁も、また向こうの壁も、“何か”の凄まじい力でまっすぐに貫通していて。おかしい、おかしいよ、人間技じゃないって――!

「あくっ、あくせられーたさん!」
「あァ?話す気になったか。」
「違いま―――ヒァッ!?すみません!その子の見た目っ、どどどんな感じでしたか!?」
「茶髪茶眼の…めんどくせェ、御坂美琴いんだろ、あいつにソックリだ。」

今日のお昼の出来事を思い出す。確か街で出会った、なんだか別人みたいにテンションの高い美琴さんとお昼にスパゲティーを食べて、今はウチに滞在している。なんだか身長が低くなっていたような気がするが、今はどうでもいい。

「美琴さんならウチに来てますよ!でもっ多分見間違いです!その子と美琴さんを見間違えたのかと――」

ドワアッと怒気が一気に開放されたのを感じて、八割方転ぶようにそこを離れる。一拍も置かず盛大な破壊音がした。見ればさっきまで居たコンクリートは粉々。スゴイ、人間って絶体絶命のピンチになったら第六感が発達するのか。やっぱりワタシは死にたくないらしい。
よろよろと立ち上がって、赤い瞳を見据える。かちあった瞳が殺気満々で恐くてすぐに視線を反らした。ムリだった。

勝てる気はしない。だが、逃げるくらいなら、生き延びるくらいなら、なんとかなるかもしれない。

酸素を深く吸う。そのまま息を止めて、ワタシは、大通りに続く暗闇の脇道に駆け出した。





ッドレース・オーバーラン
(死ぬ気で生き延びろ)



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