短話
□そしてきらりと光った刃物
1ページ/1ページ
「ねー、お茶ちょーだい」
「自分でどうぞ」
とんとんとんとん。リズミカルに包丁とまな板がぶつかる音。
「おーちゃー」
「見ればわかるでしょう。手一杯です」
「手を止めればいいじゃない」
「誰の夕飯を作ってやってると思ってるんだ、誰の」
だいたいこの時期に鍋ってどういう神経してるんだ……と不機嫌を隠さない彼女に肩をすくめて見せる。
「最近俺の扱いが酷くなってるのは気のせいかな」
「気のせいじゃないですよ、安心して」
「わあひっどーい。俺は君をこんなに愛してるのに」
「妖刀にすら嫌われてる臨也さんに言われたくないです」
「なんでそれ知ってるの」
「なんで、って」
心底呆れたような声音。くるりとこちらを振り向いたその瞳は赤、赤、赤。
「『母さん』に聞いたからに決まってるじゃないですか」
そしてきらりと光った刃物
_