短話
□だから私なんて放っておいて
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現実から背を向けたところで何が変わる?そんなの分かりきってる、何も変わらない。
ただ一時の快楽自己満足に心を浸らせて、そのあとに待っているのは酷い自己嫌悪。なにやっているんだ自分は。
夢を見た後の現実は重たすぎて、胃に鉛を詰められたみたいになる。でも、夢は悪くない。二次元は悪くない。悪いのは三次元。全部みんな総て。
そっと画面を指先で撫でる。発光するフィルタの向こうに私の世界がある。叶わない夢。この夢から醒めた時、私はまた酷い現実に潰されるんだろう。
そうしたらまた、夢を見に来なければ。
「三次元なんて、」
私の生きる場所じゃない。こんな最悪な環境で生きていけなんて、くそくらえだ。
二次元に生まれていれば。こんな思いをしても誰かが助け出してくれる。その私は物語のヒロインで。容姿は普通以上。ああ、でも彼が一目惚れしちゃうぐらいの美人でもいい。
決して電源を落とした時に画面に映る、醜い酷い顔をした人間じゃない。
指先の先の、届かない彼をなぞって想う。
「好き。好き。好き。好き好き好き、ゆーり」
これだけ想っていても届かない恋なんて、まるで悲劇のヒロインみたいだよね?
だからわたしなんて放っておいて
(彼が私を迎えに来てくれるまで)
(邪魔はいらない)(早く来て)
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