ファイとわたしの宝物

□猫になった話
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朝起きたら猫になっていた。

鏡に映る自分の姿を見て愕然。
とりあえず、白い体毛の隙間から覗く華奢な爪で、絨毯を引っかいてみた。
ガリガリと音を立てて鋭い爪が絨毯の繊維が綻ばさせてゆく。
この感じ。まさに猫。
なんということだ。
猫の姿ながらに頭を抱えた。

絨毯の上に蹲って頭を抱える白い猫。
なんと滑稽な。
滑稽ついでに頭を抱えたまま、縦横無尽に絨毯の上を転がりまわってみた。
普段の姿ならこんなことはできまい。

とても部屋が広く思える。そして普段は感じることのない、この上ない家具の威圧感。
低い視界。見えるもの全てに違和感を感じる。

なんだこれ。

半端な愉快さを感じながら転がりまわった。
すると、ガンと軽い音を立てて、机の脚に頭をぶつけた。
とても痛かった。
暫く痛さに悶えて、また絨毯に爪を立てる。ガリガリと絨毯を傷つけた。


どういうことだ。

嘆いてみても口から出る言葉は、ニャー。ニャーの一点張り。

オー ジーザス。

今の私は猫以外の何者でもない。勘弁してくれ。


窓際に移動して、頭を抱えなおした。
どういうことだ。記憶を辿り、原因を探す。
そして思い至った。

あの優男だ。

奴以外に誰がいるというのだ。
不可能を可能にしてみせるのがあの男。
不思議の塊。
魔術師?魔女?間男、違う。魔男?魔人?
なんでもいい。


あいつだ。
とりあえずあいつを探せ。

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