物語

□戻れない道
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真夜中に目が覚めた

まだ外は暗い
私は身体を少し起こし座った状態になる

月明かりさえ届かぬ闇夜の中
眠気の覚めた私は
ただ貴方の事を思い出す

『日番谷隊長…』

ポツリと漏れた言葉は虚しく暗闇の中に消えていった。
返事が帰ってくるはずもない
そう分かっていてもまたポツリと貴方の名前を呼んだ

『日番谷隊長…』

願うように…
涙が自然に零れて頬を伝った
もう戻れはしないのに
私はまだ貴方の事を思っている

永遠に思える荒れ果てた砂漠の中にいる私は
裏切り者…

貴方をずっと騙してきた

貴方はそんな事を知らずに私に笑いかけてくれた

その笑顔を見るたびに私の心は哀しみ悲鳴を上げた
それでも私は騙し続けた



…思い出す



遠い日の日常を…


楽しかったあの思い出を

もう戻る事は許されない
私は籠の中の小鳥
きっと…もう貴方の笑顔を見る時は無いでしょう

ごめんなさい…日番谷隊長

私は自分の選んだ道を進みます
例えその道が間違いだとしても…
例え自分の心が無くなっても
私にはこれしかなかったから…

いつか私は貴方と戦うでしょう
その時は迷わず殺してください
私はもう戻れない

頬の涙を拭って前を向く
私はその道を選んだ

日番谷隊長…

ありがとう


そしてごめんなさい

貴方ともっと早くに会っていたならば違う選択が出来たでしょうか?

私の自由はもう何も無い

ならばせめて貴方の事を…

思い出すのは良いですか?

貴方の笑顔を見ることがもう無いと言うならば…

せめて思い出すだけでも…

月の無い夜空はただただ暗闇を写し
人を闇に誘う

少ししか時間が経っていないと思っても現実の時間は早い

嗚呼

また朝が来てしまった

作り物の朝

私と貴方が戦う日がまた近づいた

…もし、貴方が殺してくれない時は

私が貴方を殺さなければいけない…

世界は残酷だ

私は貴方と戦います

例えどちらかが死ぬことになろうと

それが私の運命だから…

だからさようなら
日番谷隊長…

貴方と戦うその日まで


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