希望的読書感想文

44件

【きのうの世界/恩田陸 (きのうのせかい)】
★★☆☆☆
白兎は恩田陸さんが大好きなので、御自身の集大成という発言を聴いて、図書館にしました(笑)

面白かったですよ〜

ある街の外れ、水の無い川に架かった橋の上で死んでいるのが発見された行方不明中の男性。その事件を調べにきた「あなた」は男性が街のある秘密をかぎまわっていた事を知って…ってな話です。
ミステリーだと思って読むと痛い目にあうと思います
というか、このあらすじでは誰でもミステリーだと思うと思いますが、ところがどっこい、これを書いたのは「恩田陸」さんなんですよ
ですから、恩田慣れしていないと(どんな慣れだ?)、肩透かしというか、そんなのありかよという気分になると思います
な〜んかなぁ…
面白いんだけど…
一般受けしない感じ。
というのが本音。

星2つです。
万人受けを狙うのが無理なのはわかるけど、こうもマニア向けに作られるのはちょっとね。と、心の中の黒兎が申しております。

『あの時の私にとって、昨日までの世界は、既に別世界の出来事だったのだ。』

【球形の季節/恩田陸 (きゅうけいのきせつ)】
★★★★☆
恩田さんの原点かと思われる(というか、白兎が勝手にそう思っている)作品。

奇妙な噂が広がり、その噂通りに女生徒が失踪。町は恐怖に包まれ、金平糖のおまじないが流行り、新たな噂に生徒逹は怯えていた…

というお話。
怖さあり、噂あり、未知の世界ありの困った話
面白いんだけど、物語は読者の思い通りに転がらない。これは恩田さんの特徴かと白兎は思います。
個人的にはみのりの悩みながらも、自分の解答を見つけていく姿が好きです。
退屈な学生生活に飽き飽きしている人は是非どうぞ。

『―でも、あたしたちは今でも祈っているではないか?
いつまでも、みんな一緒に、幸せに。』

【薬指の標本/小川洋子 (くすりゆびのひょうほん)】
★★☆☆☆
中篇が2作。表題作と「六角形の小部屋」です。
白兎は後者の方が面白かったと思いました

何でも標本に出来る「標本室」を運営する弟子丸と、受付の仕事をして一年になるわたし。ある日、わたしは弟子丸から靴をプレゼントされて…

というような話です。
暗喩など比喩表現が多用されており、いちいち追っていく程のものでもなかったり、中途半端だったりとイマイチな感じ
背徳的な雰囲気を味わいたい方はどいぞ

『君は一晩中、僕のために働いたんだ。』

【コールドゲーム/荻原浩 (こーるどげーむ)】
★★★★★
星五つ。超、怖かったです。

高三の夏休み、中学校のクラスメートへの復讐劇は幕を開けた。犯行予告から、犯人は中学時代にいじめられていた男子が浮かび上がり…

恐ろしい、かつ、悲しくて虚しい話。歪みは歪みを生んで、回り回って返ってくる。それも、最悪の形で。
白兎は、最後の辺りは読むのが辛くて大変でした

衝撃的な真実と結末を、知りたい片はどうぞ。

やや暴力的なシーンがありますのでご注意下さい

『四年前、ついに一度も言えなかった言葉だ。こんなカンタンなひと言さえあれば、』

以下略、です(笑)
ひと言さえあれば……ねぇ?

【こころ/夏目漱石 (こころ)】
★★★★★
高校生になると読まなければならない一冊。白兎も夏休み初日に読みました

前半は学生である私から見て、魅力的だが影のある先生を描き、後半では学生への手紙という形式で、先生が友人を裏切って婚約者を得た事の独白を綴る。

と、別に白兎が内容を紹介しなくても、誰でも知っているとは思いますが、念のため
本当に駄目人間しか出てきません。特に先生は最悪の部類です(笑)
いや、ちゃんとした理由があるからこそ、最低に見えてしまうのかもしれません。
角田光代さんの駄目人間を数倍強くした感じです

明治時代に執筆され、なお現代人の共感を得るテーマへの着眼点と、文才は流石の一言。

純文学ですが、比較的親しみ易い部類に入ると思います。
中学生の内から国語を学びたい人や、高校時代にこの名作を逃してしまった人にお薦め。

『精神的に向上心のないものは馬鹿だ』

【凍える牙/乃南アサ (こごえるきば)】
★★★★☆
音道貴子刑事シリーズ最初の作品。新潮文庫の100冊に毎年選ばれています

深夜のファミレスで男がいきなり炎上。遺体には動物に咬まれた痕跡があり、機動捜査隊員の音道と、相棒の憎たらしい中年滝沢はお互いにいがみ合いながらも事件の核心へ…

というお話。
白兎の苦手な、地道な捜査が展開されますが、この凸凹コンビのやりとりがいつ好転するのか気になって、一気に読めました(笑)
なかなかお目にかかれない程の良質ミステリー。是非お薦めです

『それにしても、何という静かな、それでいて壮絶な死なのだろう。』

【小説以外/恩田陸 (しょうせついがい)】
★★★★☆
恩田陸さんのあんな文やこんな文を、一冊にまとめた贅沢な本。エッセー集、という分類が正しいかと思います。

白兎は恩田陸さんの大ファンなので、よだれをたらしながら読みました(≧ω≦)b

博学でビール好き、つまみも自分で作り、マクビティのビスケットを食べながら読書をしていたという恩田さんに数歩近づけた気がします。

しかし、恩田陸さんが嫌い、とか、恩田陸さん初めて、な人はお止め頂いた方が賢明かと思います
自分の好きな作家さんのエッセーだけを読まないと、時間を浪費した気持ちになりますよ(経験談)

『読者の時間泥棒にだけはならないよう、今後も胆に命じて書いていきたいと思います。』

【新釈 走れメロス 他四篇/森見登美彦 (しんしゃくはしれめろすほかよんへん)】
★★★★☆
奇才、森見登美彦の短編集。表題作の他に「山月記」「藪の中」「桜の森の満開の下」「百物語」があります。
どれも文学史を代表する有名な話ですが、そこは森見氏の筆力で違った味わいが生まれています。内、2つはパロディ色が強いですが、残りは真面目。「きつねのはなし」で見せた背筋が寒くなるような話もあります。

文学作品を元ネタに書くなんて、なぁんて図々しい奴なんだと白兎も思いましたが、そこは大目に見てあげて下さい。やはり面白いものは面白い。
「ふざけすぎ」「才能の浪費」と某書評家に言われたこの作品。貴方も自分の文学史の知識を試してみては?

一応、元ネタの話を知っていた方が楽しめます。読書中級者向きです。因みに白兎のお勧めは「桜の森の満開の下」。読後の喪失感が秀逸です。


『彼はいつまでもそこに座っていることができます。なぜなら、彼にはもう帰るところがないのですから。』

【銃/中村文則 (じゅう)】
★★★★☆
中村文則さんのデビュー作。恐ろしい程の冷酷な描写と、結末に白兎、ぶち抜かれました

大学生の私は、拳銃を拾った。私はだんだんと拳銃に魅せられていき…

というお話。
どーせ変質者のお話でしょ?
とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、意外にも主人公は私達とあまり変わらない思考で話が進みます。
ですから、私達も拳銃に魅せられてしまう可能性が仄かに示されているという事です

お、恐ろしい……

ダークな話や、ハッピーエンドに飽きた人はどうぞ

『そうであるから、違う未来がここに、あってもよかったのだと思った。』

【重力ピエロ/伊坂幸太郎 (じゅうりょくぴえろ)】
★★★★★
星五つです。
白兎も脱帽しました

泉水と、その弟春、そして優しい両親。素敵な家庭には辛い出来事があった。
連続放火とグラフィティアート、そして遺伝子の繋がり。その法則性を見出した泉水が見たものとは…

伊坂作品の中でも一番好きです。とにかくお父さんがカッコいい
悲しい話で、救いも有りませんが、会話はウィットに富んでいて、伊坂作品らしいです。
謎解きも面白いお薦めの一冊です。

『おまえは俺に似て、嘘が下手だ。』

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