希望的読書感想文

44件

【海と毒薬/遠藤周作 (うみとどくやく)】
★★★★☆
白兎だって学生だから純文学も読まなければなりません
この本は白兎の純文学嫌いを直してくれた一冊です。

戦時中、大学病院で医師をしていた青年達は何故、米国人捕虜の生体解剖を行ったのか?

というお話。
重いです。が、主題は生体解剖をするに当たっての医師や看護婦達の心理描写になっていますので、不必要にグロテスクな描写は登場しません。
ただ、それがないからこその不快感・恐怖感は残ります。

白兎は戸田の話が一番印象に残っています

『そやろか。俺たちはいつまでも同じことやろか。』

【裏庭/梨木香歩 (うらにわ)】
★★★★★
児童文学ファンタジー大賞受賞作。しかし、児童文学を侮る事なかれ

照美は、両親との関係が日に日に悪くなっているのを感じていた。会話や感覚のズレは大きくなり、嫌気が差した照美は、英会話教室をサボって「バーンズ屋敷」の"裏庭"へと入り込み…

というお話。
その"裏庭"の世界がファンタジーなのですが、一風変わった世界観で読者を圧倒します。
魔法が横行したり、剣士や格闘家がいる訳でもなく、ただ、この世界とは決定的に何かが違う世界を展開していきます。
照美はその世界で何を学び、どう変わっていくのか注目です。

現実世界とリンクしている"裏庭"には、信じられない位の伏線が仕掛けられており、最後まで読み終えたら、梨木さんの並大抵でない構成力に感嘆するしかありません

あまり語ると、ボロやネタバレが出そうなので、ここらへんにしておきます(汗)
荻原規子さんや上橋菜穂子さんと肩を並べる事が出来るファンタジーであると、この白兎、不肖ながら保証致します

児童文学にしては、救いのないエピソードや、恐ろしい描写がありますので、ファンタジーというジャンルで安易に飛び付いてはいけません(笑)

小学校6年生以上、ファンタジー好きな方にお勧めします。

『また、戻ってきてくれたんだね』

【噂/荻原浩 (うわさ)】
★★★★☆
猟奇的殺人犯を追う、ミステリー。荻原さんのコメディ色のある作品とは違った系統のお話。

女子高生の噂話に、「足首を切り取る怪人がいて、女の子を襲う。しかし、ある会社の香水をつけていると襲われない。」、というものがあり、それと同じ状態で女子高生の死体が発見される。噂話の出所は、その香水のモニターである事が判明し…
というお話。
噂話は、潜在的に恐怖の要素を含んでいると白兎も思いました
それに……
最後の一行にはやられました
今まで読んだ本でも、指折りに入る程の驚き( ̄○ ̄;)
うわー、びっくりしたぁ
というより、
うわぁ…………(滝汗)
という感じ。

ややグロテスクな描写があります。

『私たちは欲望を満たしてあげる情報を送るだけ。それをどう理解するかは受け手次第だわ。非合法的なことは何もしていないはずですけれど』

【エンジェル エンジェル エンジェル/梨木香歩 (えんじぇるえんじぇるえんじぇる)】
★★★★☆
白兎が初めて梨木さんの作品で怖いと思ったお話
熱帯魚の不気味さに(・Д・;)<マジカヨー

コウコは、寝たきりで記憶が段々曖昧になっていくおばあちゃんの世話をする事で熱帯魚を飼っても良い事に。だが、熱帯魚はコウコの想像と大きく異なり、狂暴な一面を見せ始めた。それを見たおばあちゃんが思い出した切ない記憶とは…

というお話。
上手く纏まらなかったorz
奇数章はコウコ、偶数章はおばあちゃんの記憶、という構成で、おばあちゃんの方はわざわざ旧字体や仮名遣いを変えている凝った構成です(そうか?)

話は最終章に向けて、加速していき、熱帯魚の結末とおばあちゃんの記憶の結末がなんとはなしに隠喩されています。
しかし………

彼女等が新しい解答を見出せるかどうかに注目です

『……私が悪かったねぇ』

【オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎 (おーでゅぼんのいのり)】
★★★★☆
来ました、伊坂幸太郎
白兎も大好きです

コンビニ強盗に失敗した伊藤は、逃走の果てに「荻島」へ。そこには妙な人間ばかりが住んでおり、未来がみえるカカシを中心に共同体を形成していた。だが、伊藤が島に来た翌日、カカシはバラバラに壊されてしまって…

面白いです。小説って感じで。
散りばめられたワードが魅力的な伊坂作品はココでも健在。
リョコウバト、オーデュボン、この島に欠けている物…

良作です。是非お薦めします。

『助けるんですよ。自分のしたことが良いのか悪いのかも判断できなくなって、飛び降りようとする男がいたら。』

【海峡の光/辻仁成 (かいきょうのひかり)】
★★☆☆☆
白兎が芥川賞作品を読みたくなった時、国語の資料集で見つけた作品。やられました

近々廃航の青函連絡船を辞職して、刑務所看守になった私。そのもとに、少年時代、優等生のフリをし、私の事を苦しめ続けたあいつが囚人として現れ…

というお話。
いかにも思わせ振りな単語が鼻につきます。
こうかいたら詩的、とか、こうかいたら文学、みたいなわざわざ小難しい単語を羅列している感が強く、一々繰り広げられる風景描写と心理描写にうんざり
ストーリーは正に純文学を踏襲しているので、もっとスッキリ書けば良かったのに

まあ、白兎がそう思っただけなので、違う解釈があったらご指導願います

『お前はお前らしさを見つけて、強くならなければ駄目だ。』

【からくりからくさ/梨木香歩 (からくりからくさ)】
★★★★☆
正直にぶっちゃけますと、かなり難しかったです
いや、白兎が頭悪いだけなんですけど(T_T)

祖母の残した家に、四人の女が共同生活を始めた。糸を紡ぎ、糸を染め、糸を織る。四人はそれぞれの生活をこなしながらもどこかで繋がっており、その中心にはある人形が…

というお話。
いやぁ、自分で書いていてもよくわからない
ズバリ書いてしまうと、四人が喧嘩したりしながらも一つ屋根の下で暮らしていく話です(はい語弊のオンパレード)
その淡々としながらも暖かく魅力的な生活に目を奪われます。
そこらへんは『西の魔女が死んだ』と似た様なライフスタイルを描いています。
複雑なのは物語後半。「俺がお前で、お前が俺で?」みたいな(いや、全く違うが)感じになってしまいました(滝汗)
ネタバレにならない様、気を付けておりますが、敢えて言わせて頂くなら、白兎は「家系図」が苦手何ですよ

『こんなことで泣くなんて変でしょう。おかしいでしょう。』

【奇跡の人/真保裕一 (きせきのひと)】
★★★★☆
評価が二分しているこの作品。別に白兎は楽しめましたけど

交通事故にあり、植物状態からの復活は望めないといわれていた主人公は、ほぼ完治して病院を退院。ただ一点、記憶だけを除いて。彼は自分が起こした交通事故を調べ、原因が自分にあると知り…

母親の献身的な介護の日記から物語は始まります。そこだけでも一読の価値有り
批判的な意見として、リアリティーがないというのが一番多いですが、別に現実味を求める小説でもないんで、ちょっとお門違いかな、と白兎は思います。そういう人には、村上龍さんの小説がお薦めです

『ぼくはぼくだ。(中略)。君とは違う。』

(中略)には重要なキーワードが入っているので、伏せさせて頂きます(笑)

【キッドナップ・ツアー/角田光代 (きっどなっぷつあー)】
★★★★☆
白兎は雑食なので、こういう正統派な小説も読むのです。

夏休み、小学五年生のハルはお父さんに誘拐されてしまい二人旅にでる。情けないお父さんと気丈でちょっと生意気なハル。二人の旅は一体どうなるのか?
ってな話です。児童文学に属しますが、結構読ませます。普通に感動しました(笑)

角田光代さんの小説は幾つか読みましたが、どいつもこいつもハイクオリティなのでお薦めです。

『私はきっとろくでもない大人になる。』

【きつねのはなし/森見登美彦 (きつねのはなし)】
★★★★☆
森見登美彦氏の唯一、最初から最後の話までネタ無しで書いた短編集。古道具屋のバイトである大学生が不気味な老人への配達を任される表題作「きつねのはなし」、失踪した尊敬する先輩とその彼女の話「果実の中の龍」、夜に人が襲われる町で奇怪な生物と遭遇した家庭教師「魔」、祖父の死によって屋敷に封じ込められていた何かと一族の歴史「水神」。

白兎は表題作と「果実の中の龍」がお勧め。特に表題作は、『夜市/恒川光太郎』の様なホラーテイストで、いつものおふざけ森見氏からは想像出来ません。

森見氏の本気を見てみたいという方にお勧め。

『もう君は私の欲しいものを持っていない』

次の10件→


[戻る]



©フォレストページ