色の無い微笑み
□†二章 存在という意味†
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そのやり取りに気がついたのは風芽だけだった。
周りの友達は話に夢中で教室を出ていった人がいる事にさえ気がついていないようだった。
風芽は慌てて友達達に今出ていった人の話をした。
何故ならその男子生徒に見覚えが無かったからだ。
クラスの人とは全員友達、そんな風に思っていた風芽に取って知らない人がいたことに罪悪感を覚えてしまったのだ。
しかし………。
クラスメイトから返ってきた言葉はその人の存在を否定するものだった。
挙げ句の果てには冗談を言って笑わそうとしていると思われてしまった。
今さっき見たものを否定され、慌ててその人と話していた先生に聞いてみると呆れた様な表情と声が返ってきた。
「ああ、今出ていった奴がそうだ。…お前らクラスメイトだろう。」
「えっ嘘、全然覚えてないんだけど。」
教卓の前に座っていた女の子が近くにいた友達と顔を見合わせる。
「本当なんですよね?それとも先生の冗談?」
「嘘いってもいみねぇだろ。」
「一番後ろにいた人?席が空いてる。」
「本当だ…。おぃ!お前らその席の近くだろ?知ってるんじゃないのか?」
男子生徒が大声を出して例の席に近い人達に声をかける。
注目を浴びてしまった人はお互いに苦笑いをした。