色の無い微笑み
□†二章 存在という意味†
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先生の授業をする声のみが響く教室には、様々な様子でその声に耳を傾ける生徒達がいた。
真面目に授業ノートを取っている人。授業を聞いてはいるがノートは取らずにいる人。中にはノートに落書きをしたり、近くの人と遊んでいる人。
しかし教室が静かな事には変わりない。
そんな静寂を壊したのは、呼び出しの放送だった。
「皇泊瀬(スメラギハツセ)君、皇泊瀬君。今すぐ職員室に来てください。親族からのお電話です。繰り返します、皇―…。」
普段ならば放送で一時は騒がしくなってもすぐに収まった。
だが今回は放送で流れた名前が問題となる。
「皇泊瀬って…だれ?」
一人の呟きが思いの外大きく響き、同じことを思っていたらしクラスメイトは一斉に喋りだした。
そんな名前の人がいるのか、名前が格好いい、きっとその人も凄く格好いいのだろう…など聞き慣れない響きに夢中になっていた。
そのざわめきの中、一人の男子生徒が席をたった。そのまま教卓に向かい歩き出す。
授業をたかが放送で中断されるという予想外の出来事に、呆気に取られている先生の前で足を止めた。
目の前に立った男子生徒を見て、教師は気が抜けたまま教室を出る許可を出した。