再会は容赦ない殺し合いだった。 この屋根の下で初めて目覚めた時も、そうだった。 絶望的に話が交わらないがゆえの激烈な口論や、得物がないだけで殺意は変わらぬ掴み合いや、事務所が半分消失するような流血沙汰など、何度やったかわからない。 それが、いつから本気で歩み寄り、心の内を言い合い、こうして静かに思い返すようになったのだろう。 最初は、「家族」や「愛情」、「心」を押しつけてくるダンテが疎ましく、それを黙らせるために「理解する兄」を演じていたのだと思う。 いつの間に“悪くない”とまで思えるようになったのだろう。 なにがここまで惹きつけるのだろう。 そして、何が求めさせるのだろう。 バージル自身へ、かつて求めていたはずの“力”以外の、何か特別なものを。 少女が立っている。 赤毛で、そばかすの、ごく平凡な顔の娘だ。 その彼女が、ごくありふれた娘と違っているのは、視線だった。 怯えと強い緊張の中にも、挑戦的な光を湛えている。 胸元に吊り下げられた、赤い石が閃く。 その輝きは、彼女の目に光る奇妙な自信と同じだ。 「アリス――」 魔界の石を身に付け、“女”の体を手に入れた使い魔。 蒼い半魔の強力すぎる魔力、それに対する劣等感の裏返しで“スパーダの力”を飾り、魅力的な肉体に装った。 「あなた以外は、褒めてくれた」 無感動なバージルの目に怯え、張り詰めてきた使い魔の、大胆ささやかな反逆らしかった。 「嫌い!その目……あ、あたしを……!」 過去と全く同じ光景。 やはり夢だ。 バージルの頭が急速に冷えていく。 「バージル」 次に呼ぶのは、誰だろうか。 |