「あのさ、キリエ…」 「どうかした?」 「そういえば、お菓子、持ってきたんだ」 「あら!じゃあ、一緒に食べましょ」 「うん…あ、いや…えーと…」 「?」 ネロが真っ赤になりながら差し出す「お菓子」は、若草色の柔らかな包装紙、桃色のリボン――バラのつぼみの造花まで――が添えられている。 丁寧にラッピングされたそれは、どう見ても…。 「私に…?」 「………うん」 贈り物を捧げる左手はまっすぐに、真っ赤な顔はどんどんうつむいていく。 彼が完全に顔を伏せてしまう前に、キリエはそっと、その手を包み返す。 「いただくわ。…ほんとに、ありがとう…」 手が触れた瞬間、大きく震えた肩から、今度はへなへなと力が抜けていく。 キリエは、そっとリボンをほどくと、中に納められたちょっといびつなチョコレートを、一粒、口へ放り込んだ。 ミルクのまろやかな甘さが広がる。 「おいしい…」 素直に呟かれた感想に、うつむいていた顔が上がる。 「ほ、ほんとに、おいしい…?」 「うん、とっても」 白い指がチョコレートをつまむ。 「はい」 「う、うん…」 差し出されたそれを――唇が指へ触れないように、食べる。 「私、この味、覚えてるわ」 「うん。思い出しながら、作ったから…」 「当ててみるね?」 「いいぜ?」 「せーの」 「一緒に飲んだココア!」 一字一句同じ答えに、二人は顔を見合わせ、くすくすと笑い――やがて、声を上げて笑いあった。 ひとしきり笑いが収まると… 今度は顔を見合わせる。 あの時は、きょうだいみたいで、おさななじみで、ともだちだった。 今は――? 今は―― 「なあ、キリエ…」 end...? |