洋書

□Catch her if we can?
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若い嵐のようなグリーン・レディを追い返した双子が、いささか疲労の濃い表情でキッチンへ帰還したときには、既にブランチとも呼ぶべき時間になっていた。

コーヒーはぬるくなり、トーストは溶けたバターでしんなりとしている。
それでも、お預けをくらった腹の虫は勢いよく目を覚まし、盛大に餌をよこせと鳴き始めている。

「とりあえず、腹減ったな」
「ああ」
「飯、食おうぜ」
「食べるとするか」

いつの間にやら習慣の付いたサラダをもさもさ頬張りながら、ふと、ダンテは思い返した。
「そういや、いわくつきの指輪、とか言ってたよな」
「いわくつきのジュエリーなど、腐るほどある。本物は1割にも満たない」
優雅にコーヒーをすする兄からは、思ったとおり、にべもない答えが返ってきた。
「ロマンと可能性を追っかけてみようぜ、お兄ちゃん。その指輪が“本物”なら?」
「ふ、ん…」
鼻を鳴らしたバージルが、カップを置く。
「本当に魔の宿った指輪なら、大人しくカラスにさらわれるとは思えんがな」
「カラスを操って目的の場所へ運ばせる、とか」
「俺が指輪であれば、そんな面倒なことはせず、前の持ち主を操るが?」
「ぐっ…」
早々と論破されてしまったが、このまま引き下がっては会話が切れてしまう。
「じゃあ、こんなのは――」
と、ダンテが言いかけるより早く、バージルが入り口を見やる。
「どうした?」
「来客…か?」
「またかよ…」
うんざりしかけたダンテの前に、制止するように兄の手が突き出された。
「いや、待て」
バージルの眉がぐっと吊り上る。
兄の鋭く尖った視線に、ダンテもとっさに身構える。
ダンテ、と、宝石のような青い瞳が目配せした。

「中にいる」

さっき、再び鍵を掛けたにも関わらず、だ。

「悪意は無いみたいだな…」
「油断はするな」
厳しさを増すバージルの視線とは逆に、ダンテの目は興奮にきらりと光を帯びる。
「今度も“女”だと思うね」
ひそひそと囁くが、兄は振り向かない。
が、僅かに睫が瞬いたのが解った。
「気に食わんが、俺も同じ予想だ」

ほら、やっぱり。

「行こうぜ」
「上等だ」




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