洋書

□Catch her if we can?
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朝の嵐のようなお嬢さんの話というのは、至極簡潔であった。

「話は簡単、さる占い師のペットを探してほしいのよ」

デスクへ置かれた写真には、一羽の、ごくごく普通のカラスが写っている。
「はあ!?」
ダンテが間抜けた声を出した。
もっとも、バージルも内心では、疲労に近い脱力感を覚えていたのだが。
「てめ…っ、朝っぱらから散々騒いどいて、たったそれだけかよ!」

――いいぞダンテもっと言え。
もはや応対する気にもなれないバージルは、カミツレの香りの向こうで、適当に弟を応援していた。

「ペットって、この貧相なカラス!?インチキ占い師の雰囲気演出のお飾りを探すほど、こっちも暇じゃないんだよ!」

ここぞとばかりに、あてつけがましく大げさなリアクションで反応してやる。

「こんな下らない話のために、俺とバージルの貴重な朝の時間が無駄になったかと思うと、悲しさで涙が出るね!」
新婚夫婦のようなのろけはやめろ、と、内心でツッコむ兄の心の声は、勿論、ダンテには届かない。

「話を最後まで聞きなさいっての!ただ逃げたんじゃないの、指輪をひっかけて逃げたのよ!それも、いわくつきの!」
「どうせ、訳ありの客にいい加減なこと吹き込んでせしめた品物だろうが」
「そんなことどうでもいいの、あっちはあんたたちをご指名で、仲介すれば私も儲かるのよ」
あけっぴろげ、ある意味で爽快ですらある事情の説明に、ダンテは肩をすくめた。
「悪魔も泣き出すビジネスマンだぜ、まったく…」
「お褒めの言葉どうも。で、どうする?引き受けてくれるの?」

「お 断 り だ ね !」

20代も半ばを過ぎたいい大人が、zeeeee!と唇をひん曲げる様子に、バージルは本日何度目かの頭痛を覚えるのだった。




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