洋書

□Catch her if we can?
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便利屋「Devil May Cry」の朝は、スラム街のど真ん中という立地にもかかわらず、それなりに穏やかである。

無論、住人である双子の兄弟が一触即発の状態でなければ――更に言うなら、主夫ともいえるバージルの怒りに触れなければ、の話だが。
この状態を「逆鱗に触れる」と言い換えても正しいあたり、兄弟の精神的な力関係が如実に現われ出ている。



そんな双子の家に、朝から勢いよくノックの音が響き渡った。



「んだよ、うるせーなぁ!」

風呂上りの格好で、ちゃっかり卓上のトマトを一つまみ失敬しようとした指先に、びしりと指弾が飛ぶ。

「痛っ!」
「せめて座れ、ばか者」

スクランブルエッグとグリーンサラダを山盛りに乗せた大皿と、ミルクの入ったジャーを両手に抱えたバージルが、冷蔵庫を背に仁王立ちしている。
いまや台所は彼の城、黒い天使の領土はかくも平和で美味しいのだ。

そうこうする間も、ノックの音は諦めない。
応対に出ないことに苛立っているのか、最初よりも叩き方は乱暴で、少々ご老体の建物に響いてやかましいことこの上ない。

「あーうるせー!」
「看板は“CLOSE”にしてあるのだろう?」
「もちろん。戸締りだって、あんたと確認したろ」
「だな」

留守かもしれないという思考は、ノックする者の脳内には存在しないのか。
ダンテがげんなりした顔をする。
「どうするよ…」
バージルもこめかみを押さえる。
「あの調子では、出るまで叩き続けるだろうな」
双子は顔を見合わせ、盛大に溜息をついた。
タフな半魔だって、腹は減るのだ。




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