洋書

□La petit Fille
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山のように積み重ねられたデリバリーのピザの空き箱や、1ダースはあろうかというビールの空き缶や、見るも恐ろしい度数が印刷された酒瓶、ソファを占領する洗濯物の山…その他、諸々のごみの山を予想して開いたドアの向こうには、しかし、がらんとした空間が広がっていた。

「あれ・・・?」

引っ越したのかしら、と思ったが、壁に並んだ不気味な剥製(?)や、ドラムセットと並んで紫色の不気味なギターが置いてあるのを見て、少なくともここに住んでいるという事実は確認できた。

「ダンテ、いないの?」

少し声を大きくして呼ばわれば、意外にも、すぐ家の主は姿を見せた。
「どうした、パティ」
「……ダンテこそ、どしたの?」
「……」
沈黙。
パティの指摘はもっともで。
腕まくりをしてモップとバケツをもつダンテなんて、今までに見たことが無かった。

――明日は恐怖の大魔王が降臨するのかも…

見てはいけないものを見ちゃったようなパティの視線を受けて、ダンテは急いで掃除道具を床へ下ろした。
「あ、あのなぁ!俺だってやるときはやるんだ!」
「ふーん…」
「おまっ…信じてないだろ!」
「だって、あたしがお掃除してる時、手伝ってくれたことないじゃない」
「いや、それは…」


「そんなことだろうと思った」


すぐ後ろから聞こえた声に振り向けば、謎はすぐに解決した。
「なるほどね」
ダンテは憮然と視線をそらした。
「うるさい…」
「バージルが帰る前に掃除を終わらせようとしてたんでしょ」
「うっ…うるさい、お子様はお茶の用意でもしてきな!」
「うるさいのはお前だ」
さりげなく鋭い突っ込みを入れながら、バージルはパティの頭に軽く手をやる。
「客に茶の一つも出せんとはな。…パティ、ケーキでも食べていくか?」
「やった!バージルのお茶って、街のカフェよりずっと美味しいのよね」
味覚に素直なパティの言葉に目を細め、キッチンへと歩き出すバージル。
その後姿を呆然と見送っていたダンテだが、はっとあることに気付いた。
「ちょ…!まさかケーキって、俺のとっておきストロベリームースじゃないよな!?」
「安心しろ、今買ってきたほうを出す。二つしかないからな」
「微妙に俺の扱いがひどくない!?」
「客を優先するのは当然だ」
それに、と、ダンテの足下へ所在なげに置かれたバケツを指差す。
「片付けが済んでいないだろう。お前のおやつは、それが終わってからだ」
「わかったよ!あ、俺の分も用意しとけよ!」
「掃除をサボったくせに偉そうなことを言うな」
「うっ…!」
「冷める前に片付けて来い」
てきぱきと動き出すダンテを後目に、バージルはさっさとキッチンへ消えた。




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