一晩中戦いっぱなし 何度もひどい怪我して …それで、わざと俺の本気の一撃受けて、かっこつけて魔界に墜ちようとするんだ。 だから、ほら、半魔の体が悲鳴上げてる。 もう、限界だってな。 まぶたはひくひく動いて、なんとか開こうとしてるけど。 指先が震えて、なんとか起き上がろうとしてるけど。 無理だ。 あんたの全身を縛り付けてた存在は、全部無くなっちまった。 いつも背筋のばして、高慢なくらい顎上げて。 そんなあんたの姿勢を作ってた糸は、全部、ばらばらにぶった切られちまった。 今、あんたの体を支えてるのは、糊のきいたシーツと洗い立てのブランケットと新しい枕。 ほら、あんたの体は、心は、欲しいって言ってる。 居心地のいい、休む場所を、さ。 悪魔が目覚めたその後で 今思えば、ずいぶんと手荒な真似をしたとは思ってる。 だけど、仕方ないだろ? ちょっとでも気ぃ抜けば、あいつは逃げちまうんだから。 実力だっておっかないくらいある、頭も切れる、おまけに誇り高くて強情っぱりだ。 目を覚まして俺を視界に入れた瞬間、あいつは俺を殺そうとするんだ。 きっと、いや、絶対に。 俺を――二度と生き返らないように――ズタズタにした後で、あんたはここを出て行くだろう。 そうやって、また何年もかけて同じことを……いや、これも違うな……前よりも、もっと空恐ろしい、壮大で純粋でいかれたパーティーをおっ始めるんだ。 そんな兄貴をわざわざ自由にしておくほど、俺は優しくない。 で、非常手段に出たわけだ。 言っとくけどな、あいつを痛めつけるような真似は、誓って、やってないぞ! ……まあ、あいつにしてみりゃ、同じ仕打ちってな。 でも、最初からそうしたわけじゃない。 眠り姫のお目覚めは、予想よりずっと静かだった。 そして、予想よりずっと、俺への憎しみは強かったんだ。 |