洋書

□Welcome Back
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表も裏もないコイン。それはまるで、彼の性格そのもので。
「かっこつけて……」
語尾を潤ませたルシアは、コインを大切に握り締めた。
痛いほどの祈りを込める愛娘を見守っていたマティエが、ふと、振り返った。
「行ったのか、あいつは。」
歪から溢れた悪魔たちを一掃してきたバージルが、淡々とした口調のまま尋ねた。ルシアは静かに頷く。
「どこまでも格好をつけたがる奴だ…」
静かに笑うバージルの、背に追われたスパーダが闇の中で淡い光を放ち続ける。
「それを持っていかなかったのか。」
「ああ。お前に預けるから絶対に無くすな、と脅された。」
マティエの静かな呟きに、バージルもひそやかな苦笑で答えた。

パーフェクトアミュレットを戴くフォースエッジ――スパーダは強力無比。
今のダンテであれば、スパーダ以上の力を発揮することもできよう。
それを、敢えて兄に預けていった。

ルシアにも、マティエにも、そしてバージルにも、その理由は解っていた。

魔剣スパーダは魔界を開く鍵そのもの。万が一、それが悪魔の手に渡れば、人類は、いや世界は確実に滅亡する。
そして、もう一つ。

最愛の兄を魔界へ行かせないための方便。



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