洋書

□※Devil Must Cry!
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頼みの綱であるケルベロスは、魔具にしてはまともな格好のため、新しい冷房の買出しで外出。
ただし、真夏の炎天下を、三揃いの正装で汗一つかかず涼しい顔で歩く姿が人間らしいかと言われれば、それはそれで難しいが。


「暑いのは皆さん一緒です。今にネヴァンが扇風機の一つでも動かしますよ」
「どうせ兄専用だ!もうやだ!後はあの愚弟にやらせればいいんだ!」
口調はぶち切れつつ、几帳面にごみを捨てたところでアラストルは壁に戻った。
あらかた片付いた事務所を見回すと、アルテミスも小さく溜息をつき、半魔の血が混ざったバケツを手に持った。
いるだけで暑苦しいアグニとルドラは一応、刀に戻される。

ほぼ皆殺しにされても強靭な生命力の悲しさ、すぐさま家の修復を命じられたベオウルフが、よたよたと外壁を積み上げる。
人変してもゴーレムかフランケンシュタインの怪物かという魁偉な外見のベオウルフだが、こんな時は全身に哀愁漂っている。
「ベオウルフ、悪魔の血ですよ」
心なしか疲れた声で、アルテミスはバケツの水をベオウルフにぶっ掛けてやる。
多少は汚れているものの、今のベオウルフにとって悪魔の血が混じった水は生命の水だ。
ぶるぶると体を振ると、さっきより少しペースを上げて家の修理を再開するベオウルフ。
が、やっぱり暑さとダメージのせいか、足下がやばい気がする…。

そこへ、陽炎が立ち上るくらいの道路をきびきびと歩いてくるケルベロスが見えた。その足下からは逃げ水が引いていく。彼も暑いのだろう、体の周囲に冷気をめぐらせている。
「おかえりなさい」
「やはり、お前が迎えてくれたか」
他の連中派へたると思っていた、と氷の番犬は笑った。
脇に抱えていた冷房を示すが、穴だらけの事務所を見ると設置場所に困ってしまう。
「ああ、買ってきたのか」
シャワーを浴びたバージルが、ケルベロスの持つ大荷物を見た。
「ネヴァン」
ドラムセットの隅で素知らぬ顔で佇んでいたギターが、びくっと弦を鳴らす。
「出番ですよ、ネヴァン」
「このために体力を温存していたのだろう?」
「お前もたまには働かんか…!」
いつの間にやらアルテミスやケルベロス、アラストルもネヴァンに迫っている。
「ネヴァン」
バージルの有無を言わせぬ一言が決定打。
しぶしぶと人型に戻ったネヴァンは勢いよく発電を開始。同時に、ケルベロスが魔界の氷で壁の穴を応急処置し、事務所に試運転という名のオアシスが戻ってきた。




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