「何を騒いでいる。表の連中が怖がってるぞ」 両手に買い物袋を抱えたバージルは、足元にいそいそと寄ってくるケルベロスを見やると、軽く頭を撫でた。 ついでネヴァンのほうを振り返る。 「ネヴァン。後で鍛錬に付き合え。エアレイドを試したい」 「勿論よ。雑魚じゃ届かない上空からの攻撃も考えてあるわ」 「それはいい」 ふっと不敵な笑いを見せるバージルに、最上級の微笑みを向けたまま武器化するネヴァン。 明らかにダンテに対する態度とは別格である。 そして、次に視線を向けられたのは、半べそ状態のアグニとルドラ。 「アグニ、ルドラ。夕食を考える。手伝え」 必要な単語だけを並べた、命令口調のような会話だが、双子の刀には十分な効果を発揮した。 「喜んで」 「そなたがそれを望むなら」 心なしか、目がかまぼこ型に笑っている双刀たち。 無造作に――おそらく玉子などの壊れ物が入っていない――買い物袋をつかむと、バージルはキッチンへと歩みを進める。 落ち着くところへ落ち着いた魔具たちを眺め、あまりの対応の差に打ち震える男が一人。 「お…お前ら…」 「家主は俺だぞおおおお――っっっ!」 end |