誘惑の魔女との会話を強制的に放棄し、次は壁に掛かった一対の刀をじろりと睨む。 「お前らはお前らで、俺との約束はどうした?」 顔の付いた赤と青の刀は喋らない。 喋らないことを条件に同行を許されたのだから、当然といえば当然なのだが。 「今は喋っていいぞ、そして言い訳があるなら聞いてやる」 引きつった笑顔でアグニとルドラに近づくダンテだが、両手はしっかりエボニーとアイボリーの照準を定めている。 「待て!」 「待たれよ!」 「我らは兄上に聞かれたのだ」 「そして兄上に答えたのだ!」 「スパイスの使用方法を!」 「スパイスのおいしい調理法を!」 「幾種類かはお前の腹にも入ったであろう!」 「そして満腹になったであろう!」 必死に喋る双子の刀に、容赦ない銃弾の嵐がぶつかる。 「ひどい!」 「ひどすぎる!」 強面のくせに半泣きの刀たち。 「んで?バージルに料理方法を聞かれたとき、お前らは勝手に喋ったんだな?」 「……」 「……」 「都合の悪いときだけ無口になるなぁっ!」 再びエボニー&アイボリー炸裂。何しろアグニもルドラも魔具なので傷一つ付かないが、痛いものは痛い。 労働者の権利を一切無視した雇い主の行いに、強面の泣き声がひとしきり響き渡ったとき。 |