洋書

□※過去―Side Dante―
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「マスター」



落ち着いた、低い声。
胸がざわめいて、同時に、ひどく安心する。
ダンテは静かに、声の主へと向き直った。

燃えるような紅い髪、血の夕焼けに輝く紅い瞳。
吼える頭骨を胸元にはめ込み、腰骨のあたりからは鋼鉄の羽を生やした、重厚で不気味な鎧。
すべてが暗い鋼色と赤で形造られた、その存在。


「リベリオン…」


無意識に滑り出た言霊が“彼”の力を捉えた。
紅い瞳が静かに伏せられ、魔界の神剣が膝をつく。

「私を使え、マスター。あなたはスパーダの子、私の新しい主」

ダンテは、不思議と落ち着いていた。
父の書斎でよく見た巨大な剣と目の前で跪く男と。
彼はもう、二つが同じ
“リベリオン”
なのだと認めていた。



「俺は、父さんみたいに強くない」

青い瞳が紅い瞳を直視する。

「強くなればいい。私が守るよりずっと、強く」

紅い瞳は、顔を上げてまっすぐに言う。

鋭い鋼の指先が、しなやかな銀の鎖を――魔界を開く石を、主の白い首筋へ捧げた。

黒い焦土に鮮血の夕陽を浴びて
ひとりの少年とひとりの悪魔。


「リベリオン、俺に従え」
「仰せのままに――」


彼らの“反逆”は、今、ここから始まるのだ。





end
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